「アルコールを飲むと生産性が下がる」
さきほどの仮説に戻ります。日本人の約6割はお酒をたくさん飲んでも大丈夫だし、実際ビールが好きで、にもかかわらず「飲まない人」が増えていて、その結果「よく飲む人」は20代男性では16%、30代で25%と少数派になっているという現象が、若者の酒離れの正体ではないかという説です。
ではなぜ飲めるしビールをおいしいと思う若者が、飲み会でアルコールを飲まないのか? コロナの要因を除いてコロナ禍以前の状況を想定した話をすると、飲み会の回数が減っているわけではないようです。なにしろノンアルコール飲料市場は2017年ごろにはすでに急拡大しているのです。
そこで若者がアルコールを飲まない理由を調べると、
「アルコールを飲むと生産性が著しく下がるから」
という意見が目に留まりました。
そうなのです。ビールの話から少し離れて、若者文化を調べているとわかるのですが、若者は飲みニケーションは苦手といいますが、コミュニケーションに関しては中高年世代と比較すればきわめてすぐれた世代です。特に仲間内であればリアルとSNSのコミュニケーションを駆使して、20年前の世代とは比較にならないぐらい深く広く、周囲とのコミュニケーションをとる傾向があります。そしてお酒を飲みすぎるとそのコミュニケーションの生産性が下がってしまうのです。
アフター5はスマホを触っていたい
実際、若い世代と一緒に飲み会をしていると、ほとんど皆といっていいくらい若者はしきりとスマホをいじりながら飲み会に参加してきます。私のようなおじさんは食事と会話に集中しているのですが、彼らは飲み食いして私との会話もたのしみつつ、同時にインスタ映えする料理の写真をSNSにアップして、LINEでその場にいない友人とも会話を楽しんでいる具合です。おじさんがお酒をのみながら生産性を下げている19時から24時までの時間帯に、若者はものすごく高い生産性でコミュニケーションを繰り広げているのです。
どの仕事に就いているかにもよりますが、社会人の場合、通常は出勤から退社まで就業規則で勤務中にスマホで少なくともおおっぴらにはSNSなどプライベートの情報発信をしてはいけない人が多いのです。逆に言えばアフター5は彼らにとって待ちに待ったスマホタイム。そこでようやく触りたくて触りたくてたまらなかったスマホに思いっきり触ることができる時間が始まります。で、そこをアルコールに邪魔されたくないという気持ちが働く。その自制心が「若者のアルコール離れ」の犯人なのではないか? というのが今回の私の説です。