スパイへの初期的対応策
さて、今回解説した典型的なスパイ活動への初期的対応策は何であろうか。
スパイというニッチな脅威に対し、防衛関係の大企業のみが意識が高く、その他業種の大企業や中小企業が無関心でいてくれれば、スパイとしてはこれほど攻めやすいことはない。思い返してほしい。スパイが欲する技術・情報は何も特定の大企業のみが持っているわけではなく、そのネットワーク内に入り込めればよいのだ。ターゲットは“本丸”だけではない。
さらに、日本の技術は中小企業が支えているともいわれている。潤沢な資金がある大企業と比して、中小企業においてスパイ対策に大きな予算を割くことができるだろうか。
そこで、まずスパイの手口を知り、防衛意識を高めることが、初期対応として簡易かつ有効なのである。ここで注意すべきは、過度に“国名”に敏感になり、排他的な思想を持たないことだ。今回解説した中で出てきた国は、現在の国際情勢を鑑みても決して日本と素晴らしい関係にあるとはいえず、スパイ活動を国家の意思によって行っている。それでも、日本にいる外国人のほとんどは善良な心の持ち主である。
どうか、読者の皆さまを通じ、日本におけるカウンターインテリジェンス意識の向上がなされ、民間発信のカウンターインテリジェンスコミュニティーの形成の発端となることを願ってやまない。