数年がかりでターゲットを下調べするケースも

下命を受けたZ氏はこう動く。

1.ターゲットの選定

ターゲットは、新会社の設立元となる企業の半導体関連部署の従業員(役員を含む)、または従業員の家族や知人、その他新会社設立に向け関与しうる人物(主担当部署ではなく、法務などももちろん視野に入る)。その動向を知る異業界の人物や秘書、その家族なども候補とする。

ターゲットはダイレクトに情報にアクセスできる人物であればよいのは当然だが、そこに行きつくまでに間接的な人脈をたどるルートも考えられる。また、家族から接近してもよい。例えば、妻は夫の知らないコミュニティーで警戒心なく活動しているが、いざとなれば夫の所有する端末にアクセスできる。男女の関係から妻を取り込むのも手段の一つだ。

バス停に並ぶ人たち
写真=iStock.com/Bill Chizek
※写真はイメージです

上記に当たる人物に直接接触を試みずに、その人物の出入りする社屋周辺で釣り針を仕掛けてもよい(単に道を聞いて親切に答えてくれる人物からたどればよい)。現に、スパイによるこのような活動=リクルート活動は多く見られる。

2.ターゲットの調査/評価

ターゲットが決まったら、その人物を徹底的に調べ上げる。例えば、1年近くあなたの行動がスパイに見られていたとしたらどうだろうか? あなたの買い物や出先での行動から趣味嗜好しこうや健康状態、家族との関係もすべて把握される。恐らく、行きつけの店や友人、異性の好み・性癖も容易に把握されるだろう。

そして、ターゲットとして有益な人物かどうかの評価を行う。情報を保有しうるか、アクセスしうるか、“落としやすい”か、がスパイ側にとっての評価のポイントだ(中国のハニートラップ事例では、数年単位で対象を調査する場合もある)。