一般人を巻き込んだ工作も

別の例では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)等の約200近い団体・組織が2016年6月から大規模なサイバー攻撃を受けた件で、その一連のサイバー攻撃に使用された日本国内のレンタルサーバーを偽名で契約・使用していたとして、捜査機関が2021年4月、30代の中国共産党員の男を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検(読売新聞オンライン 2021年4月20日)。同年12月にもう1人、中国人元留学生について逮捕状を取った。

このうち元留学生「王建彬」は、レンタルサーバーの契約を人民解放軍のサイバー攻撃部隊「61419部隊(第3部技術偵察第4局)」所属の軍人の女から頼まれたという。王が以前勤めていた中国国営企業の元上司が、王と女をつないだとされる。(47NEWS 2022年7月4日

この事件の恐ろしいところは、サイバー攻撃の偽装・足取りを消すために王という一般人が使用された上、そのきっかけとなったのは、王の元上司という極めて私的な人脈なのだ。これが諜報の世界である。

普通の一般人であっても、それとは気づかぬうちにいつの間にかスパイに使用される側に回ってしまうことはいくらでもありうる。あなたが日本人であっても、それは同じことだ。(後編に続く)

関連記事
【後編】「母校が同じ」に親近感を抱いたらもう手遅れ…ロシアや中国のスパイが「普通の民間人」を陥れる巧妙な手口
「中国のスパイ気球」で米メディアが再注目…旧日本軍が太平洋越しに放った「1万個の風船爆弾」の末路
ロシアの「本当の経済危機」はこれから始まる…侵攻1年で見えた「自力で自動車が作れない」という深刻な問題
エアバスCEOは「3社独占になる」とため息…航空業界に激震が走った「中国製ジェット旅客機」のすごい完成度
なぜロシアや中国は他国を侵略するのか…世界情勢が小学生でもよくわかる「地政学」超入門