返り咲いたプーチン
12年3月4日の大統領選挙を前にした2月23日の「祖国防衛者の日」には、プーチン支持の集会に数万人が集まった。「90年代に戻りたくない」と書いたプラカードが掲げられ、参加した女性のひとりは「(多民族国家ロシアで)プーチンさんはどの民族も国民として平等と言っている。私が支持する理由です」などと話した。そして、大統領選の結果はプーチン氏が第1回投票で約64%を獲得し、返り咲きを果たした。
続く反プーチンの大規模デモ
しかし、反プーチンの大規模デモは5月の大統領復帰後も続いた。12年6月12日の祝日「ロシアの日」(国家主権宣言採択の記念日)には、野党勢力がモスクワ中心部で反政権のデモ行進と集会を催し、警察発表では約1万8千人、主催者発表では5万人以上にのぼった。このとき、デモ行進を取材していた私は、参加者が掲げる1枚のプラカードを写真に収めた。
「(集会を取り締まる)集会法はファシズム国家への道だ」という表記の下に、5人の見慣れた顔写真が並んでいる。ヒトラー、ムッソリーニ、スターリン、ベリヤ、そしてプーチンだ。このデモからちょうど10年後、プーチン氏はウクライナ侵攻という市民を巻き込む暴挙に出て、キーウ近郊ブチャでの虐殺や原発占拠、ウクライナ東南部4州の併合強行など数々の非道行為で国際的非難を浴びているだけでなく、国内では欧米の制裁によって経済的苦境を強いられ、予備役動員による混乱や市民弾圧も重なり、ロシアを自壊の瀬戸際に自ら追いやっている。まさにこのプラカードは、10年後のプーチン氏を見通していたのかもしれない。
ただ、反プーチンのうねりが高まっても、支持の岩盤層が厳然としてあるように思えた。それはどういう人たちなのか。同じく「20歳のロシア プーチン再び」の企画で取材した。