スコットランドで崩御したことに大きな意味がある

9月6日には、リズ・トラス英国新首相の任命をバルモラル城で無事終えたばかりだった。メディアに配信された女王の姿はとても小さくなったように見えたが、母親のクイーンマザーは101歳まで存命だったから、健康な心身のDNAを受け継いでいるはず。その上コロナに罹患された時も見事に復活したのだから。

それなのに……。

「9月8日の午後、女王は崩御し、その数時間後にBBCからニュースが発表されました。チャールズ国王とカミラ王妃、女王の長女であるアン王女(72)はスコットランドにいたので臨終に間に合ったけれど、それ以外のロイヤルメンバーは間に合わなかった。それでも、女王が愛し信頼する長男夫妻と長女に最後に会えたので、安心して天に召されたのではないでしょうか。あくまで私見ですが、女王はバルモラル城で最期の時間を過ごしたい、そうすればスコットランドの人々に寄り添えると思っていらっしゃったのではないでしょうか。命ある限り国に奉仕された姿勢には尊敬の念しかないです」

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とコメントするのは、イングランド中部ダービーシャーで日本人補習校の校長を務める佐藤実佐子さん(50代)。

スコットランドとイングランドには長い闘争の歴史と確執がある。今、スコットランド独立の機運が再び高まっているなか、佐藤さんが言う通り、女王がこの地で崩御した意味は大きい。

そして、愛し信頼する長男と長女に直接別れを告げたことも。しかしお互いにこのような関係を構築するまで、どれだけ時間がかかったことだろう。

女王の死=チャールズ国王の誕生…この複雑な親子関係

女王には4人の子供がいる。

女王が21歳で故フィリップ王配殿下と結婚してすぐ生まれたのが、チャールズ(以下敬称略)とアンの2人。そして女王が30代半ばの時に生まれたのが、アンドリュー(62)とエドワード(58)だ。上の2人と下の2人では、同じ子供であっても、どうやら可愛さの種類が違うと思われる。

チャールズとアンの場合は、後継者を産まないといけないという義務感もあって出産、そして彼らがまだ小さい時に準備期間もないままに即位と、とても慌ただしかった。要するに若い女王には母としての余裕がなかった。

「人生が短かろうが長かろうが、一生をイギリス国民と英連邦の人々に捧げる」

撮影=東野りか
イギリス内の書店には故女王関連の本が陳列されていた

そう宣言した女王は、その言葉通り、君主としての義務を何よりも最優先した。まだ幼かった子供たちを置いて長い外遊にも出た。

一方の下の2人であるアンドリューとエドワードは、女王としてのキャリアを積んでから生まれたのだ。母としても女王としても余裕がある時期に授かった子供たちであり、後継者でもないので、シンプルに可愛いのだろう。女王は生前退位をしないので、彼女の死=チャールズ国王の誕生となる。ここに母と息子の複雑な関係性の源がある。