たとえば、スウェーデンがNATOに入るためにはトルコの合意が必要なのだが、トルコが条件として求める、スウェーデン在住の過激派のトルコへの引き渡しを最高裁が阻止してしまった。となると、スウェーデン政府は手も足も出ない。NATO加盟を諦めるわけにもいかず、トルコのエルドアン大統領を満足させる代わりの案を提案して話し合うしかない状況に追い込まれている。

「金を出したい」という人は自由にすればいい

結局、裁判所に邪魔されずに、韓国政府ができるのは、今回の「肩代わり案」しかないのである。日本側は、日本の企業や個人が財団に寄付することが条件というのなら拒否すべきだが、勝手に出したい人が出すのまで止める必要もあるまい。

私が思うに、日本側が最低限守るべき一線は、被告企業は財団にお金を出さないことだ。これに関しては、出すとしても日本の財界が別途、韓国と協力事業をする枠内ということになったらしいので、誤解される余地は少ない。

一方、「日韓関係の改善のためには日本側も金を出すべきだ」と思う個人や企業は、おおいに出されたらいい。

とくに、いわゆるリベラル系の方々は、頑張って思い切った金額を出したらどうか。テレビ番組で「やっぱり日本側が一歩譲歩して、政府としてこれまで表明してきた反省とかおわびをきちんとあらためて表明をし、できれば日本の当該企業なんかもそこ(財団)に寄付をするという形にしないと、なかなかまとまらないだろうなと」などと提唱されたジャーナリストなど自分で出されたらいい。

あるいは、韓国・ソウルの刑務所跡に行って「土下座」した鳩山由紀夫元首相など、莫大ばくだいな資産の使い道としてこれほど有意義なものもあるまい。

日韓関係が悪くて喜ぶのは中国と北朝鮮だけ

また、帰化しているかどうか別にして広い意味の在日韓国・朝鮮人の方は、日韓関係が悪化して一番困っておられるわけだから、寄付されたらいい。

慰安婦問題に関する2015年の日韓合意では、安倍晋三首相(当時)が巧妙に立ち回り、アメリカ政府を保証人に立てるようなかたちで、「不可逆的な最終的措置」として基金への寄付を決めた。そのため、その後、文在寅政権が蒸し返しても基本的には日本の肩を持ってくれている。

保守系の人の一部は、安倍政権が慰安婦合意を結んだことまで、韓国に騙されたように批判するが、それは間違っている。安倍元首相がいなくなった現在、日本の保守は良い意味での狡猾こうかつさを失ってしまったように見えることがある。