子が親から「もっとも言われたくない言葉」

就職優先という指摘が間違っているという意味ではありません。経済的に豊かになれば、世界観が変わることだってあるかもしれません。それに、韓国は、青年ニート率がかなり高い国です。「中央日報」など大手メディアが集中的に取り上げて特に話題になったのが2019年のOECD(経済協力開発機構)報告書(データは2017年基準)で、就職せず、教育訓練も受けない、いわゆるニート青年の比率が、韓国18.4%、36カ国のうち7位でした。

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ちなみに、日本でもよくニートという言葉が問題になりますが、同データで日本は9.8%。当時、経済危機または長期的な経済低迷に襲われていたトルコ(27.2%)、イタリア(25.2%)、ギリシャ(22.4%)、メキシコ(21.3%)などもあるので、7位となると、事実上、五本指、または四天王です。

だから、就職して頑張ればなにもかも解決できると、専門家たちは、青年層の心の問題を剝奪感とは別のものだと考えていました。どことなく、若い人たちをちょっとだけ見下している、そんな見解だとも言えるでしょう。

シンシアリー『韓国の借金経済』(扶桑社)

韓国で子が親から「もっとも言われたくない言葉」とされる、「なんでお前はサムスン(韓国最大の企業)に入れないの?」と同じレベルの幼稚さではないでしょうか。

でも、そもそも「若い人は恨を残すのではなく、親の恨を晴らす役」という考え方そのものが、微妙すぎます。復讐ふくしゅうをテーマにした時代劇ならともかく、詳しく誰がどう悪いのかも分からないまま「ええい、これだから世の中って」と中二病みたいなことを言い残して亡くなった親の恨(ハン)って、子がなにをどうすれば晴らすことができるのでしょうか。

世の中全般が相手じゃ、もう世界征服でもしないと無理じゃないでしょうか。そう、大人が恨(ハン)のなかで生きる姿を見て育った子は、恨(ハン)に依存するしかありません。青年層の心のなかにも、この相対的剝奪感はしっかりと根を下ろし、大きくなりつつありました。