子供にお金をかけたい妻、老後資金が欲しい夫

そして、やはり一番気になったのは、克典さんが冒頭で話していた教育費です。息子の中学受験のため、妻の主導で、塾や家庭教師に月9万5000円もつぎ込んでいるわけですが、問題は、夫婦間で考えに相違があること。中学受験をすること、そして合格を勝ち取るためなら金に糸目はつけぬという情熱を、夫婦で共有できていないのです。そもそも佐々木夫妻は、中学受験について最初から合意が取れていなかった。

妻は教育にお金をかけたい。対して夫は中学受験自体、消極的。受験に向けて走り出し2年経った今でも、克典さんの中では「“オール公立”でいいのでは」という考えがぬぐえないほど、価値観に相違があります。

子にかける妻の思いと、家計に対する夫の不安が、互いに理解できていない。そして、この中学受験に関してお子さんの考えが聞こえてないことも気になります。

妻の浪費が激減した、夫の一言

克典さんは思案しました。

これまで塾の夏期講習や冬期講習など、イレギュラーな費用は妻のボーナスから出していました。ですが、この春息子が6年生になればさらに追い込みの塾代がかかり、妻の収入が追い付かない。夫が補塡ほてんするよりほかなくなります。私立中学に進学したら最後、夫の支出がますます増え、貯金どころか赤字に転落するだろう。いくら自分が家計改善に意欲的でも、相手が協力してくれなければ、改善は実現しない。相手の心を動かすにはどうしたらいいか――。

悩み抜いた末、克典さんは、教育費に上限を設けました。上限からあふれた教育費は妻の“小遣い”や行き過ぎた“被服費”などから負担してもらおう――という作戦です。

最初は戸惑っていた妻ですが、夫は「もう教育費は出せない。ない袖は振れないんだ」の一点張り。でも妻としては子供の教育費だけは譲れない。結局、折れたのは妻でした。妻は愛するわが子の教育費を出すために、自身の被服費などをようやく諦めることができたのです。そして徐々に、夫の要望通りレシートも渡すようになり、そこに記された金額も減少。被服費も3万円もカットでき、そんな妻の意識の変化に家族も協力し合い家族で行っていた高級温泉やキャンプへの“気分転換”も、回数を減らすことで半減させました。

克典さんは妻の大きな譲歩を目の当たりにし、妻への不満が徐々に和らぎ、自身も食費を大きくカットできるようになりました。