彼女は昨年4月にアップロードされた最初の動画にて、平壌に住んでいると自己紹介している。その流れで、「私の住む平壌は、とても美しく素晴らしい街です」と切り出し、話題はいつのまにか平壌がいかに住みやすい都市であるかにすり替わっている。

「来たことがありますか? もし来たなら、すごくびっくりするでしょう。行く先々にアミューズメントパークがあるからです」と彼女は自信たっぷりに話す。

画像=YouTube動画「Sally Parks[SongA Channel]」の「Song A's life "Munsu Water Park Part 2" |송아|」よりキャプチャ

いつの間にか始まる北朝鮮のお国自慢

そのほか彼女は、これまで公開した12本の動画を通じ、豊かな「日常」の風景を世界に発信している。夏場には、通りの店に飛び込んでトマト入りのかき氷を堪能し、別の日にはウオーターパークのプールとスライダーで汗を流し、といった具合だ。

今年の元日には、昨年うれしかった出来事を振り返る動画を投稿している。Vlogを始めたので視聴者の皆さんに出会えたことが思い出です、などと振り返るなかで、いつのまにか話題は北朝鮮発展の話へ。

昨年は「ソンハ通りに1000戸の新しい住宅が建てられたのです」と発展を強調した。政府のおかげで父と祖父が無料でこのマンションに引っ越すことができた、と目を輝かせるが、その目はカメラの向こうの台本を追っているように見える。

一般市民が撮影できるはずがないのに…

愛らしい少女のソンAちゃんは、Vlogを通じ、感じたままの事実を語っているのだろうか?

米CNNは、この動画がプロパガンダの目的の下に撮影され、個人のVlogに偽装して公開されたとの見方を示している。

英語を話しハリー・ポッターの蔵書を持つ彼女に対し、CNNは「とりわけ、西洋社会発の異国文化を禁じている北朝鮮の厳しい規制を考えると、これは非常に印象的である」と述べ、不自然さを指摘している。

米インサイダー誌も同様の見方だ。ソウルに位置する北朝鮮分析会社のNKニュースは同誌に対し、北朝鮮政府がプロパガンダを広める目的で特別に認可した、ソーシャルメディア上での広範な活動の一環である可能性が高い、との分析を示している。

豪公共放送のABCも同じく、「しかし、11歳のこの少女は、残忍で謎めいた独裁国家から誕生した最新のソーシャルメディア・スターなのだ」と報じ、偽装されたVlogであるとの見方を示している。

北朝鮮がVlogに偽装したコンテンツをソーシャルメディアに放ったのは、今回が初めてではない。過去にはユーミーと名乗る少女が、北朝鮮ではおよそあり得ない華やかな日常をVlogで発信していた。