プルコギを堪能するグルメ動画かと思いきや

ユーミーさんは10代後半から20代前半と思われる女性であり、Vlogを通じて朝鮮の文化を紹介している。

昨年10月にはレストランのテラス席で動画を撮影し、グリルでプルコギを焼き、冷麺を食べながら北朝鮮の食文化を紹介した。

こちらはソンAちゃんの動画よりも周到にVlogになりすましており、プロパガンダ色をほとんど感じさせない。動画は現在までに6万5000回再生されている。

画像=YouTube動画「Olivia Natasha- YuMi Space DPRK daily」の「Yumi Space 1 - Ice Cream」よりキャプチャ

ユーミーさんは、私は豚肉よりも鴨肉や羊肉の方が好き、と個人的なストーリーを語りながら、次々に肉を焼いては胃袋に収めていく。

「お腹いっぱい」と締めくくる動画に取り立てて不自然な点はなく、疑いを持っていない視聴者であれば、北朝鮮の人々は豊かな食文化を楽しんでいると刷り込まれてしまうだろう。だが、貧困と飢えが蔓延まんえんする北朝鮮の実態からは遠い光景だ。

ユーミーさんは昨年8月から、このように北朝鮮の豊かなライフスタイルを紹介するVlogを13本ほど公開している。ジムに通い、お腹いっぱい食べ、洞窟探検を楽しみ、高麗人参入りの高級コーヒーを味わうという、夢のような生活が動画の世界では展開している。

画像=YouTube動画「Olivia Natasha- YuMi Space DPRK daily」の「Korean Bulgogi-YuMi Tour Series」よりキャプチャ

北朝鮮の日常生活にはほど遠い

北朝鮮人権データベースセンターのパク・ソンチョル研究員はCNNに対し、北朝鮮政府の意向に基づいた「よく練られた寸劇」のように見えるとの分析を語っている。

理由として、貧困にあえぐ市民の暮らしからほど遠いほか、なにより動画撮影が許可されYouTubeにアクセスできる時点で、一般の市民だとは考えられないとの指摘だ。

CNNは、「これは普通のVlogなどではない」「ここ1~2年でインターネット上に見られるようになった、北朝鮮の住民が日常生活を紹介すると主張している、複数のソーシャルメディアアカウントのひとつである」と指摘し警戒を呼びかけている。

インサイダー誌も同様に、「何であれ北朝鮮の人々は、インターネットへのアクセスやオンラインへの動画投稿を禁じられている。――ところがユーミーとソンAは、公然とカメラをぶら下げて平壌をうろついているのだ」と不自然さを指摘する。

米シンクタンク「北朝鮮のプロパガンダが近代化している」

北朝鮮はこれ以前にも、プロパガンダのネット展開を画策してきた。2020年には若い女性YouTuberによるVlogチャンネル「エコー・オブ・トゥルース」が誕生した。

同チャンネルはモダンな動画コンテンツで登録者を集め、ときおり金日成・元国家主席の回想コンテンツを混ぜ込んで公開するという手法だった。YouTubeはコミュニティ・ガイドラインに違反したとして、チャンネルをすでに閉鎖している。