「悲しい」気持ちをごまかさない

いま、がんと闘病中の家族がいらっしゃる方は、どうかご自分のつらい気持ちを癒やすことも大事にしてください。誰かに聞いてもらうことで、心の準備ができたり、覚悟ができたりします。心の準備ができると、大切な人との最後の時間をおたがいに充実させることが可能になってきます。その結果、実際にもし大切な方が亡くなっても、その後の悲嘆が軽減されるのです。

悲しみがわいてきたら、その気持ちをごまかさず、しっかりと悲しむことが大事です。死別が近いという事実にきちんと直面することで、やり残しの課題に取り組むことができるのです。いままでできなかったコミュニケーションを取る、相続など生前に準備しておくべき手続きを行う、といったことが考えられます。

大切な人の死に直面できずに、亡くなってから後悔したり、必要な手続きをしていなかったりしたことで大変な思いをされた遺族も多く見てきました。

無理に吐き出させるのは逆効果

予期悲嘆は我慢せずに、そのつらい気持ちを表に出すことで癒やされるのです。あなたの気持ちを受け取ってくれる、情緒的な部分のサポーターに話してください。もちろん、医療者相手でもかまいません。話すことで気持ちが楽になるだけでなく、その方が亡くなられたときの悲しみも軽くなる可能性があります。我慢せずに、気持ちを手放しましょう。

四宮敏章『また、あちらで会いましょう』(かんき出版)

もし本稿を読んでくださっているあなたが、医療者や、ご家族のまわりの援助者ならば、ご家族の予期悲嘆を感じた際には傾聴してください。ときには、気持ちを吐き出しやすいよう促すことも必要です。

その際に、ひとつ注意すべき点があります。それは、予期悲嘆を無理やり出させてはいけないということです。すべてのご家族が予期悲嘆を抱えているわけではありません。

また、予期悲嘆を抱えていても、それを出すことが怖いと感じているご家族もいます。無理に出させるとかえって逆効果です。自然に出てくるまで待つこと、そしてただ聴くことが重要なのです。

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