勝利のためには核の可能性も

中国の奇襲攻撃で前方展開部隊の多くを失ったアメリカ軍が再び台湾に近づくには、数千マイル離れた場所から航空機と軍艦を投入し、ミサイル、スマート機雷、電磁波妨害などをかき分けながら戦わなければならないだろう。

さらにそのような兵力を集結させるには、攻撃的なロシアからNATOの東方側面を守るために配備されているような、他の重要な地域のアセットを引き離してくる必要があるかもしれない。そしてアメリカは一つの大国にしか対処できない軍備だけで二つの核武装した大国に対処するという、実に厳しい安全保障上の課題に直面するかもしれないのだ。

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)

アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。

2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない。

「恐ろしい2020年代」は厄介な10年間となりそうだ。なぜなら中国が厄介な地政学的な分岐点――衰退を避けるために大胆に行動することが可能であり、またそうすべき時点――に差しかかっているからだ。

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