筋トレ沼は、命がけだ

暴飲暴食を続け、体の痛みも生じたが、よかったことはある。

沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)

「コミュ力がついたことです。清掃の仕事の同僚から、飲みに誘われたりもするようになりました。あと、自分も痩せられるということがわかったことでしょうか。カモられる雰囲気を察知できるようになりました。

おそらく、僕が通っていたジムは、サプリメントの売り上げで、トレーナーの給料が決まっていたんだと思います。何かを売りつけようとする人の独自の雰囲気がわかるようになりました」

彼はまだ得るものがあった。それは人間の本心を見極める目だ。しかし、健康な生活は失った。今もひざの裏には痛みが残る。「やばいな」と思うときは、歩くのをやめてタクシーに乗る。裁判をしようにもトレーニングとの因果関係は立証できない。

過度な筋トレによる後遺症は圭太さんの他にもあちこちで聞く。Aさんは過度な筋トレと糖質制限で腎機能に異常をきたした。Bさんは無理なワークアウトで靭帯を損傷し、足を引きずっている。Cさんは過度なキックボクシングトレーニングで頸椎ヘルニアになり、一カ月の入院をしたなどだ。

危険をはらむが、「やめては努力が水泡に帰す」と思ってしまう筋トレ沼は、命がけなのだ。

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