大腸内視鏡検査は5年、10年に一度で十分

健康のためとはいえ、痛い、つらい、恥ずかしい検査はできることなら受けたくありません。なかには、微量ながらも放射線被曝をする有害な検査もあります。何が必要で、何が不要な検査かの見極めが重要になります。アメリカの内科専門医認定機構財団では、不要な検査や治療をなくす「チュージング・ワイズリー(賢い選択)」という取り組みをしています。

鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)

たとえば、大腸内視鏡検査は5年、10年に一度で十分。必要以上に多く検査すると、検査による合併症のリスクや費用が高くなってしまい、検査によるデメリットがメリットを上回ってしまうというのです。また、チュージング・ワイズリーでは、健康で無症状の人にPETによるがん検診や、MRIによる脳ドックも推奨されていません。

日本ではこれほどスッパリ切り捨てられていませんが、ぼく自身はこれらの検査を受けていません。家族がくも膜下出血を起こし、自分も起こすのではないかと心配しすぎる患者さんには、脳動脈瘤を疑い、保険診療のなかで造影CT検査やMRI検査をすることもあります。日本では、ちょっとした発熱に対しても抗生物質を処方する医師がいますが、感染症には効果がなく、むしろ多剤併用によって耐性菌をつくり、抗生物質が効かなくなるリスクがあります。不要な服薬や治療はしないことが大切なのです。

健康なうちに終末期の過ごし方を考えておくべき

とくに、不要な医療が問題になるのが終末期です。口から食べられなくなったときに、胃ろうをつくって栄養を得られるようにすることがあります。その処置を受けるかどうか、家族や主治医に伝え、できれば書面にしておきたいものです。

自発呼吸ができなくなったとき、人工呼吸器をつけるかどうか。心臓が止まったあと、蘇生処置をするかどうか。最期はどこで過ごすか。そういったことをよく考え、毎年、自分の誕生日などに意思を伝えておくこと。自分の人生のしめくくりを後悔しないために、何が不要で何が必要か、健康なときから考えておきましょう。

胃ろうや人工呼吸器、蘇生処置……決めるのはあなた。健康なうちによく考え、家族や主治医に意思を伝えておこう。

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