※本稿は、鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
「正常値」に縛られなくていい
高血圧の診断基準は、最大血圧が140mmHg以上か、最小血圧が90mmHg以上になる場合で、正常血圧は120/80です。
ぼくは、多くの高血圧患者さんに「130/80」を目標に生活指導をしています。まずは生活習慣の改善が大事です。すぐに薬を出すことはしませんが、必要なときには出しています。
70歳以上の人には、血圧の治療目標設定を150/90に上げています。高齢になると軽い動脈硬化を起こしている人が多くなります。その状態で、無理やり多量の薬で血圧を下げると、脳や心臓へ血液を流す力が弱くなってしまい、かえってよくありません。
年齢や血管の状態を見極めて、微妙なさじ加減が必要なのです。やはり、正常値にこだわりすぎず、高血圧につながるような生活全体を改めていくというのが基本です。
血圧からは、高いか低いかという以外に、もっと踏み込んだこともわかります。次の計算をしてみてください。
脈圧は、大動脈や心臓の冠動脈といった太い血管に動脈硬化があるかどうかの目安になります。血圧が127/78の場合、脈圧は49です。30~50は正常と考えています。65以上になると太い血管の動脈硬化を疑い、レントゲン検査やエコー検査、心電図の検査などをしています。
みなさんも自分の血圧を測り、脈圧を計算して、血圧管理のモチベーションにつなげてほしいと思います。脳梗塞や心筋梗塞を起こす太い動脈の老化を防ぐには、運動、野菜、減塩がキモです。
血圧はかなり高くなっても、自覚症状はほとんどありません。「静かな殺し屋」(サイレントキラー)ともいわれるように、じわじわと血管を傷つけ、脳卒中につながる動脈硬化を進めます。高血圧患者は正常血圧の人より認知症のリスクが1.6倍に高まるという研究論文もあります。
正常値にこだわりすぎず、上手に血圧をコントロールしていきましょう。