健康長寿でいるためにはどうすればいいのか。諏訪中央病院の名誉院長で作家の鎌田實さんは「健康づくりに必要なのは『うまいものを食べて、運動すること』。コレステロール値を気にする人もいるが、脂質異常がなければ、卵などのコレステロール値が高い食材はいくら食べてもいい」という――。(第1回)

※本稿は、鎌田實『60歳からの「忘れる力」』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

体重を測定します。
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60歳を過ぎたら、足は太いほうがいい

60歳は健康づくりの節目です。それまでの中年期は、メタボ対策が健康づくりの中心的な課題でした。メタボになると動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、認知症……とさまざまな病気がドミノ倒しのように増えていきます。だから、中年期はメタボにならないように、脂肪をためこまないことが重要なのです。

ところが、60歳を過ぎると、加齢や運動不足によって筋肉の量が減っていきます。食が細くなる人もいて、栄養不足になることが多くなります。「やせてうれしい」などと思っていると、70代、80代で筋肉が減るサルコペニア(加齢性筋肉減少症)や、全身の機能が低下して十分に活動できないフレイル(虚弱)という状態になってしまいます。このままでは、要介護状態へまっしぐらです。

90代になっても、歩いて好きなところへ行き、おいしいものを味わうには、60歳になったら「やせて健康になる」というメタボ対策はいったん忘れ、「筋肉を増やす」フレイル予防へと考え方をシフトする必要があります。やせて脂肪を落とすことばかり意識していると、大事な筋肉までやせて、フレイルが加速してしまうからです。

自分がフレイルかどうかを知る目安として、「指輪っかテスト」というのがあります。両手の親指と人差し指で輪をつくり、ふくらはぎのいちばん太いところを囲みます。指が届かないくらいの太さがあれば、十分な筋肉があると推定できます。

けれど、指が重なってしまう場合は、筋肉がやせている可能性があり、フレイルに注意しなければなりません。若いころは、ほっそりした足を目指す人が多かったかもしれませんが、60歳を過ぎたらしっかり筋肉がついた足が重要になるのです。大根足でオーケー。少しずつ脂肪も減らせれば最高です。