予想を下方修正した同社の警戒感

2023年3月期の業績予想に関して、日本電産は売上高を当初予想の2.1兆円から2.2兆円に修正した。一方、営業利益は当初予想の2100億円から1100億円に下方修正された。その結果、営業利益率は当初予想の10.0%から5.0%に低下する。製品の単価に関して、これまで以上に強い下押し圧力がかかりやすくなっているとみられる。それだけ、米欧での利上げや家電製品などの需要減少の影響は大きい。

それに加えて、コストプッシュ圧力も依然として強いようだ。足許では、やや楽観的にも見えるが、中国の景気持ち直し期待の高まりなどによって資源価格が上昇した。ウクライナ危機や、IT先端分野などでの米中対立の先行きも見通しづらい。そうした要素を背景に世界的に設備投資のモメンタムは弱まりやすいと日本電産は先行き警戒感を強め、業績予想を下方修正した。

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「スマホ需要減」主力製品の市場は飽和している

今後、日本電産は収益性の引き上げを目指して構造改革を断行する。そのための費用増加も業績予想の下方修正の一因だ。根底には、コア・コンピタンスにさらなる磨きをかけなければならないという危機感の高まりがある。日本電産は、世界経済のデジタル化の加速などによって人工知能=AIの利用などは加速度的に増え、企業の優勝劣敗はこれまで以上に激化すると予想している。

そのために、事業運営の無駄を省きつつ、人材の育成、研究開発体制の強化を徹底し、より高付加価値な製品を生み出して収益性を高めようとしている。決算説明会では、グループ全体で月給を統一する方針も示された。これまで以上に日本電産は組織全体の集中力を引き上げ、新しい需要を、世界トップのスピードと技術で生み出そうとしている。

見方を変えれば、世界経済を支えてきた主力製品の需要は飽和し、減少し始めた。象徴的なのは、スマートフォンだ。米調査会社IDCによると、2022年10~12月の世界スマホ出荷台数は前年同期比18.3%減の3億30万台だった(速報値)。6四半期連続の減少だ。昨年7~9月期の減少率(同9.7%)から落ち込み幅は拡大した。スマホは、SNSやサブスク型のビジネスモデルの成長を加速させ、データセンタ建設も増えた。