「やっぱり夫婦だな」を大切にする

生涯を未婚で終える人が増えています。

国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2022年)」によると、50歳までに一度も結婚しない人の割合は、2010年に男性が20.14%、女性が10.61%。それが2020年には男性が4人に1人の28.25%、女性が17.81%にまで上昇しています。

将来、晩婚化(結婚の遅れ)や非婚化(生涯結婚しない)の増加により、この数値がさらに高くなることが予想されます。これは現在日本が抱えている少子化問題の直接的な原因にもなっています。

実際、わたしを担当する編集者なども独身者が多いし、離婚経験者もたくさんいます。男女を問いません。当然、子持ちも少ない。少子化の進行を実感します。

夫婦という単位、そのありかたがどんどん変化してきているようです。

これは、いいとか悪いとかの問題ではありません。こういう状況の中で、若い人たちがこれからどんな人間関係を築いていくのか、興味があります。

では高齢者の夫婦はどうでしょうか。

わたしの周りにも熟年離婚が増えてきてはいます。

本来、60代からの夫婦には、おたがいに死を看取る役割があると思います。どちらかが倒れたときに、すぐに対応できるように生活を共にしている。極端なことをいえば、そんな関係でいいと思っています。

「やっぱり夫婦だな」と思える。そんな関係を大切にしたいものです。

ふだんは別行動。それもよしです。

あるアンケートによると、「配偶者と一緒は楽しいか?」という問いに、「そう思う」「まあそう思う」と回答した人は、合わせて約9割という結果もあります。

かつては「老いては子に従え」といわれましたが、今日、子どもは子ども、それぞれ別の人生を歩んでいます。

結局、最後に頼りになるのが夫婦という、おたがいさまの関係なのでしょう。

写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

伴侶の「ありがたみ」がよくわかる法

小説家・平岩弓枝さんが、編者としてまとめた『伴侶の死』(文藝春秋)という本があります。

この本には、「伴侶」というこの世で最愛の人を亡くした人たちの、40篇の手記が収録されています。序文「添いとげればこそ」では、平岩さんが次のように書いています。

「よく、夫婦は空気のようなものだと申します。常にそこにあるのが当り前で、多忙多彩な日常生活では、つい、有難味を感じもしないで過していて、或る日、突然、失って激しい衝撃を受け、こんなことなら、もっと感謝の心を伝えておけばよかった、相手を大事にするべきだったと、後悔、先に立たずの口惜し涙を流します」

弘兼憲史『弘兼流 60歳から、好きに生きてみないか』(三笠書房)

普段から、伴侶に対して感謝の心を持つことを、忘れずに大切にしたいものだと思います。

また、この本の巻末には平岩さんと精神科医の齋藤茂太さんの対談が掲載されています。その中で齋藤さんが次のように述べていました。

「神様は男より女性のほうを強くおつくりになったようですね。(中略)精神的にも復原力が強いですよ。現実にいろいろな患者さんと接していても、それは実感します。そりゃあ亭主に死なれて2、3年は泣き崩れているかも知れませんが、男性よりは立ち直る確率が高いですよ。逆に奥さんに死なれた男性の場合は、33パーセントが3年以内にあとを追って亡くなっているという統計がある」

「配偶者を亡くした人は、現在を失う」といわれています。

しかし、女性は夫を亡くしても、孤独の中で無為に過ごすということはほとんどありません。友だち同士で食事や旅行に行ったり、美術展に出かけたりします。

ところが男性の場合、妻を失ったことによる喪失感からなかなか抜け出すことができません。「女房がいなくなって、生活に不自由した」「体を壊した」という話も多く聞きます。

男性は弱い動物だとつくづく思います。

60代からの男性は、衣食住といった生活の場での、そして孤独に耐えるといった意味でのしっかりした「自立」が求められているのだと思います。

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