世話をする家族がいない高齢独身者が激増する
出生数の急減は日本の経済に大きな影響を及ぼす。それは、まず教育業界の危機として表れる。5年後には、乳幼児の激減によって、保育所待機児童問題が解消に向かう代わりに、経営危機に陥る私立幼稚園、保育所が増えるだろう。そして、15年後には私立高等学校、20年後には大学や専門学校の経営が厳しくなる。18歳人口が現在の約3分の2になるのである(ちなみに、現在の大学入学定員は約62万人である)。
そして、少子高齢化が進むことにより、現役世代が減る。今でさえ世界一の高齢化率(29.1% 2022年)がますます高まるのだ。要介護者人口が増え、介護労働力がますます不足する。今でも介護水準が徐々に低下しているが、これからは、お金がなければ十分な介護が受けられないという時代が到来する。それに備えて貯金に励めば、消費が縮小し、経済停滞が加速する。それだけではない。世話をする家族が誰もいない高齢独身者が増加し、孤立したり貧困に陥るケースの激増が見込まれる。
抜本的な対策をしてこなかったツケ
出生数の減少は、人口学者の予測範囲内であり、分かっていたことでもある。今までは、少子化のマイナスの影響は遠い将来のことなので、危機感は薄かった。少子化と言われて30年間、抜本的な対策をしてこなかったツケが、出生数の急減という事態を招き、20年後の日本社会の持続可能性に黄信号がともって初めて、政府が慌てだすのは、まさに泥縄といってもよいだろう。「異次元」という言葉を使いたくなる気持ちも分からないでもない。