海上保安庁法は1948年、自衛隊法はその6年後に制定された。自衛隊が誕生した時点で海保との関係を整理しておくべきだったが、手つかずで来た。
昨年、安全保障関連3文書の改定へ向けた自民党内の議論で海保を軍隊化する狙いから海保法25条の改正が検討された。「海の法執行機関」が消えると自衛隊と外国軍との間に入る緩衝材の役割がなくなる。
いたずらに緊張を高めかねない愚策というほかないが、年末に改定された安保関連3文書のうち国家安全保障戦略に「海上法執行機関である海上保安庁が担う役割は不可欠である」との一文が盛り込まれ、現状維持とすることで落ち着いた。
シーガーディアンの有事や情勢緊迫時のあり方について、海上保安庁の担当者は「海上保安庁の任務にない軍事目的で飛行することはない」と回答している。
海自でも重要性が増す無人機の役割
一方、23年度から試験運行を始める海上自衛隊のシーガーディアンは、軍事的な運用となるため、中国軍やロシア軍の艦艇を監視することになりそうだ。対ロシアは八戸基地の利用で十分だが、対中国となると東シナ海までの進出に時間がかかり、燃料も浪費する。より近い基地の活用が必要になる。
昨年11月、米軍は鹿屋基地にリーパー8機を配備して東シナ海の監視飛行を始めた。運用開始に先立って鹿屋市を訪れた在日米軍のジェームズ・ウェロンズ副司令官は「鹿屋基地は戦略的に重要な基地だ」と説明。米中間で緊迫する台湾情勢を背景に鹿屋基地の重要性を強調した。
リーパーは米軍によるアフガニスタン攻撃に利用されたミサイルを搭載できる無人機だが、今回、武器は搭載していない。むしろ陸上偵察版のリーパーがどこまで海洋監視に活用できるのか実証実験の色彩が強いようだ。
米軍は今年11月には引き揚げるが、海洋監視の必要性が薄れることはない。海上自衛隊による監視は、これまで通り鹿屋基地や那覇基地(沖縄県)の哨戒機を使うほか、シーガーディアンの鹿屋配備も予想される。基地が新設される馬毛島(鹿児島県西之表市)も配備候補となりそうだ。
シーガーディアンはリーパーのセンサー能力を格段に高めた海洋監視の専用機にあたり、潜水艦のスクリュー音を探知するソノブイを搭載できるため対潜水艦戦に活用できる。
海上自衛隊の関係者は「シーガーディアンを恒常的な監視飛行に活用し、潜水艦を探知した場合、P1哨戒機やP3C哨戒機が急行する。無人機と有人機の組み合わせが考えられる」と話す。
「シーガーディアンは『令和の黒船』になるかもしれない」
シーガーディアンのパイロットやセンサーオペレーターになるにはもちろん専門的な教育が必要だ。とはいえ、哨戒機の乗員養成と比べて期間は短く、負荷も格段に小さい。とくに女性にとって新たな社会進出の機会となるのは確実だろう。