八戸基地には大小30個のモニターが並ぶオペレーションセンターが開設された。GA社から派遣されたパイロットとセンサーオペレーターが座るコックピットに並んで指示を出す海上保安官の席がある。
24時間の連続飛行が可能なので、八戸基地を離陸後、本州、四国、九州、北海道の領海線をたどって日本を一周して帰ってくることができる。この間、オペレーションセンターの人員は交代し、切れ目なく監視できる仕組みだ。
映像は八戸基地だけでなく、東京の海上保安庁本部や全国の航空基地へも同時中継される。海上保安庁には固定翼機、ヘリコプター合わせて90機の航空機があり、海難事故などの状況に応じて、シーガーディアンと組み合わせて運用する。
海上保安庁が無人機導入の検討を始めたのは北朝鮮の違法操業船の出没がきっかけだ。2016年以降、日本海最良の漁場「大和堆」に北朝鮮の漁船が現れ、スルメイカの違法操業を始めた。巡視船が近づくと逃げ、また戻るというイタチごっこが続いていた。
そこで一般の航空機と比べて滞空時間が長い無人機の特徴を生かし、強力な監視体制を敷く計画が浮上した。その後、北朝鮮漁船の違法操業は減ったものの、日本は世界第6位という広い排他的経済水域を持ち、海洋監視の重要性は変わっていない。
海自と海保の連携で「鬼に金棒」
シーガーディアンを使った飛行テストは2020年10月から八戸基地で始まった。航空機との空中衝突を避ける自動回避行動を確認するなど1カ月の飛行テストの結果、正式に採用が決まった。八戸基地の貸主にあたる海上自衛隊も23年度からシーガーディアンを使った運用試験を開始する。
浜田靖一防衛相は昨年11月の記者会見で「海自・海保それぞれが取得した情報の共有や、施設の相互利用を通じた運用の効率化を図ることとしている」と述べ、同じ基地で同一機種を運用する海上保安庁との連携に言及した。
一方、海上保安庁の担当者は筆者の取材に「海上保安庁が得た情報については、海上自衛隊に提供する」とし、「海上自衛隊と同一の海域を飛行する可能性がある場合は有人機と同様に飛行海域の調整を実施することが必要」と回答した。
海上自衛隊は日本防衛、海上保安庁は海の警察活動と役割・任務は異なるものの、連携すれば実質4機体制となり、入手できる海洋情報は増えることになる。
このまま海保と海自の一体化が進むのか
平時の連携はメリットばかりだが、有事や情勢緊迫時の連携は海上保安庁にとって、軍事行動とみられるおそれはないだろうか。
海上保安庁法25条は《この法律のいかなる規定も海上保安庁またはその職員が軍隊として組織され、訓練され、または軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない》と定めている。
一方、自衛隊法80条は《内閣総理大臣は(略)特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部または一部を防衛大臣の統制下に入れることができる》と規定している。
海上保安庁の非軍事化を定めた条文と軍事機関である自衛隊を指揮する防衛相が海保を統制可能とする条文は矛盾してみえる。