トランプ関税砲の衝撃、成す術のない石破政権

アメリカのトランプ大統領が相互関税の発動を表明、世界貿易戦争の火ぶたが切られた。日本に対しても24%の関税(自動車は25%の追加関税をすでに発動)をかけると言明、すでに物価高騰の影響が深刻化している日本経済に追い打ちをかけることは確実だ。

この理不尽なトランプ砲に、日本はどう対処するのか。政財界全体が身構えるなか、肝心のトップリーダー、石破茂首相の判断力は、「自分自身を見失って」新人議員に商品券を配ってしまうほど、お粗末でひ弱なものであることが露呈した。

このままでは夏の参院選で自民党は再び大敗することは避けられないが、奇妙なことに、石破首相を直ぐに替えてでも体制を立て直そうという声は広がらない。衆院の議席数では自民・公明を上回る野党側も、むしろひ弱な石破首相の方が戦いやすいと見てか、直ちに政権を倒そうという構えはない。

少数与党のハング・パーラメント(宙吊り議会)が、そんな不安定で「宙ぶらりん」な状態を生んでいる。しかし、それで迷惑を被るのは日本国民の側だ。この危機を乗り越えるために、限界が露わになったハング・パーラメントを解消して政治を安定させることができるのか。そのことが、いま日本政治に問われている。

「10万円商品券」で支持率は危険水域に

二度の修正に追い込まれたとはいえ、少数与党のもとで年度内に予算を成立させたのは間違いなく画期的なことだ。ところが1日、予算成立を受けて記者会見した石破首相は、そう言って胸を張るどころか、冒頭からお詫びと釈明、説明に追われた。

なかでも、新人議員に10万円の商品券を配ったことについて、「自分自身を見失っていた」と反省の弁を述べたのには驚かされた。自民党の政治とカネの問題が問われているなかで、自分の足元からカネにまつわる問題が露呈したのだ。

謝るのは当然としても、一国の首相が「自分自身を見失っていた」と、自らの判断力に重大な欠陥があると告白したのである。首相の信頼性に重大な疑問符がついてしまった。それが石破内閣のスローガンである「納得と共感」を得られないことは、誰よりも石破首相自身がよくわかっていたはずだ。

その後の会見では表情こそ柔和で淡々としたものだったが、プロンプターに視線を向けて慎重に原稿を読み上げる姿には、やはり石破首相らしさは感じられなかった。

途中、大阪万博の開幕に触れて、マスコットの「ミャクミャク」を手にしてヒクヒクさせたあたりが、「キモかわいい」と言われる石破の持ち味なのだろうが、この大事な記者会見の演出としては正直、違和感しか覚えない。

万博/イベントに参加した石破首相
写真=時事通信フォト
ファッションイベント「マイナビTGC 大阪・関西万博」に参加した石破茂首相(右から2人目)=2025年4月5日、大阪市此花区