「メディアは隠しているが…」のウソ

【秦】さらに言えば、自衛隊や外務省のOBなどが陰謀論を口にするのもかなり大きな問題だと思っています。

一般人には情報が入らず、しかも分かりづらい軍事や外交の話題において、OBであっても自衛隊や外交関係者が危機を煽ると「自衛隊や政府は、間もなく戦争が始まるという情報をつかんでいるのだろう。だからああいう主張をしているに違いない」と思って鵜呑みにする人も出てきてしまいます。

しかし、本当に戦争が始まる時には、国内外のメディアが大々的にその兆候を報じるでしょう。安全保障環境が変化してきているからこそ、一部の元関係者はより丁寧で慎重な言葉選びが求められるはずです。

写真=iStock.com/Tero Vesalainen
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陰謀論にハマる人の特徴

――「政治に興味を持ちすぎることが、陰謀論にはまり込む原因になる」という指摘もありました。どのように「ほどほど」を保てばいいのでしょうか。

【秦】日常的な出来事に関心のある人は、陰謀論信念を持ちにくい傾向があります。それはよく考えれば当たり前で、「普通」に暮らして、自分の生活や職場の話、子供の教育、スポーツや芸能人の話題に関心が高い人は、「日常」というフィルターバブルの中で生活していますから、政治の話や、まして陰謀論など入り込む余地がない。

――ほとんどの人にとっては議会の解散より、キンプリのメンバー脱退の方が圧倒的に重大事件。

【秦】陰謀論にハマってしまう人は、特に党派性的な観点から政治に関心を持つことで、自分から陰謀論に近寄ってしまっています。

民主主義国である以上、有権者は相応の政治的関心を持つべきで、そんなことは当たり前ですし否定するような話でもありません。

しかし「韓国は絶対に許せない」とか「アメリカがロシアを追い詰めた」、あるいは「メディアは大事なことを報じない」といったところから入ってしまうと、確かに政治への関心は高まりますが、同時に陰謀論も引き寄せてしまう。