もう一人の「コロナ対策の顔」は突然辞任を発表
実際には、氏に言われるまでもなく、ドイツ社会は急速にコロナ以前の状態に戻り始めている。重症化が激減した安心感もあったのか、ほぼ2年間も毎日発表されていた新規感染者数もとっくにニュースから消え、今ではほとんど話題にもならなくなった。相変わらず3回目、4回目のワクチン接種は推奨されているが、以前のように焦って打つ人はいない。
それと同時に、“国民の健康を守るために厳格なコロナ対策を貫いた”として、一部の国民に高く評価されていたラウターバッハ保健相の人気も翳り始めた。一時はトークショーの常連で、「コロナ対策の顔」になっていた氏ではあるが、彼の振りかざすホラー・シナリオに疑問を持っていた人々も少なくなかったのである。
さて、サプライズは続く。ドロステン氏と並ぶコロナの権威でロバート・コッホ研究所の総裁であったローター・ヴィーラー氏が、1月11日、いきなり3月末の辞任を発表したのだ。ヴィーラー氏は、これまでラウターバッハ保健相と共にコロナ対策を率いてきた。何十回と行われた状況説明の記者会見でこの2人が並んでいる光景は、今もドイツ人の目に焼き付いている。ラウターバッハ氏との意見の相違が取り沙汰されたことも一度ならずあったが、そんなことが取り上げられるほど、ヴィーラー氏は注目の渦中にあったわけだ。
マスクをやめたドイツ、殻に閉じこもる日本
当然、賞賛ばかりではなく、激しい批判にも見舞われ続け、氏の心労はこの3年、かなりのものだったのではないかと想像される。4月からは研究に専念するというが、その辞任が唐突すぎて、まだ後継者も決まっていない。コロナさえなければ、ロバート・コッホ研究所の総裁という医学者の最高の花道で引退できたろうに、コロナは彼の人生も変えてしまったようだ。
いずれにせよ、ドイツのコロナは終焉に向かっている。公共の交通機関でのマスク義務も解除され、着用義務は病院と老人施設のみ。病院関係者や警官などのワクチン接種義務も、23年3月からは廃止だ。コロナの感染予防はようやく、自分で自分を守るという自己責任の方向に切り替わる。これまでも、ワクチンやマスクや手洗いで、インフルエンザやノロウイルスなどから自分を守ったのと同じように。
個人的には、経済回復のためにも、国民が元気を取り戻すためにも、日本も今年こそコロナを終わらせるべきだと思っていたが、中国の大流行のニュースで、日本人はさらに用心深く殻に閉じこもってしまうかもしれない。今回もまた、日本の景気回復の鍵を握るのが中国になるのかと思うと、何とも言えない無力感に苛まれる。
なお、ワクチンに関しては、世界的にその被害が表沙汰になり始めているようなので、日本でもなるべく多くの情報が公開されることを望む。