政治家のポーズに利用された子どもたち
目を引いたのは、昨年11月28日、当時、政府のコロナ対策を全面的に後押ししていた倫理委員会が、多くのコロナ対策は青少年と子どもたちへの配慮が欠けていたと認めたことだ。そして、難しい状況下、果敢に連帯を示してくれた子どもたちへの賞賛と、子どもたちの受けたダメージの修復のため、できる限りのことをするという決意を表明した。
ドイツでは、責任問題に関しては裁判で判決が下らない限り誰も認めないのが常であるから、倫理委員会が自分たちに責任の一端があると認めたわけではもちろんないが、一応の総括ではある。
ただ、子どもたちが連帯の意思を示したというのは欺瞞だ。幼児は町の公園がすべて封鎖されていたので遊べず、大きな子どもたちも広場でサッカーボールを蹴ることさえ禁止されていた。どれもこれも、おそらく政治家が「やっています」というポーズを見せるための措置だった。今では、子どもたちに選挙権がないことが、政治家に邪険にされた決定的な理由だと言われている。
中国の感染爆発の最中に「コロナ終了」宣言
もちろん、当時は多くのことが不確実だったから、結果論を振り回すのは正しくないが、それにしても今、「子どもたちには気の毒なことをしてしまった」という遺憾の気持ちさえ、当時の責任者の誰一人として発しようとしないのはどうしたことか? 教育関係者や心理学者が必死で警告を発していたのに、政治家やその周りにいたアドバイザーはそれを無視し、しかも、倫理委員会がそれにお墨付きをつけていたことは紛れもない事実だったのに。
さて、12月27日、長らくテレビの画面から消えていたドロステン氏が、ある新聞のインタビューに登場。唐突に、「コロナは終わった」と宣言した。これが、あっという間にトップニュースになったのだから、彼の威力は衰えていない。
もっとも今回は国民の間に、「え? あれだけ危険と言っていたのに、突然終わり?」という戸惑いも多かった。しかも27日といえば、すでに中国の感染爆発のニュースも伝わっていたから、氏は、たとえ中国から大量に旅行者が流れ込んだとしても大丈夫と言ったに等しい。今ごろどんな水際対策をしても、ウイルスの侵入は防げないという判断かもしれない。ちなみに、ドイツ政府は目下のところ、中国からの入国者に対する制限にはあまり乗り気でないようなので、今回もまた、ドロステン氏の意見は政府の意向と融和している。