命がけで戦う婚活儀式「ドンガ」

エチオピアのムルシの人々にはもう一つ興味深い風習があります。

それが「究極の婚活儀式」である「ドンガ」です。

「ドンガ」は毎年雨期の終わりにおこなわれます。

この儀式では、ムルシの男性同士が長さ1.2メートルほどの細長い棒、通称「ドンガスティック」を使って、命がけで闘います。

写真=iStock.com/luisapuccini
男性同士が命がけで闘う(※写真はイメージです)

ドンガでは同じ村の男性同士は戦いません。

また開催される場所や時間は、村の長老たちの会議で決められます。

戦いは、どちらかがギブアップするか、大きな怪我を負うまで続きます。

一応審判はいるのですが、ギブアップするとその後2年間儀式に参加できなくなるので、男たちは命がけで戦います。

本当に死者が出ることもあります。亡くなった場合、相手の家族に牛などを送るという賠償制度すら用意されています。

戦いに勝った男性は、村人に担がれて女性が集まる場所へと向かい、そこで待つ目当ての女性の前に、「ドンガスティック」を置きます。

もし、女性が男性を気に入れば、自分のブレスレットをドンガスティックの上に重ねて置き、これでめでたくカップル誕生となるわけです。

しかし、勝利できない男性は、いつまでたっても、女性にプロポーズする権利を得ることができません。

ムルシの男性にとって、「ドンガ」は己の勇敢さをアピールする場であり、また人生の伴侶を見つける場でもあるのです。

この「ドンガ」は、私が現地を撮影した2008年の時点では実施されていましたが、あまりにも危険な儀式ということで、2011年以降、国によって禁止されてしまいました。

しかし、ムルシの人々の要望によって、2015年より再開されることになります。

そのくらい、彼らにとっては必要不可欠な儀式だったのです。