長いスパンで長寿地域と短命地域とを判断する
生命表における平均寿命は特定年次の年齢別の死亡率から考えて、何歳まで生きるかという確率を計算した結果であり、毎年、死亡率が変化しない場合にのみ額面通り受け取ることができる数字である。死亡率が経年的に改善されていく場合は、その年生まれた子供の実際の寿命はもっと長くなるのである。
地域別の寿命についても、災害や感染症、個別の健康事情などその年の死亡率に及ぼす地域の特殊事情によって大きく左右される性格の数字であることを考慮に入れる必要がある。
今年、男なら滋賀が最も長寿な県だから滋賀に引っ越せば安心と単純に判断するわけにはいかない。寿命の長さの要因としては、気候風土のようにあまり変化しないものもあれば、短期的な地域の特殊事情もあるのであるから当然だろう。
そこで、どの地域で住めば健康上、比較的安心かを判断するには、5年毎に計算される平均寿命を時間的にもっと長いスパンで見ておく必要がある。
都道府県別の平均寿命データが得られるのは、戦前3期と戦後ほぼ5年おきである。図表2および図表3では、各期における男性および女性の平均寿命の都道府県順位を記すとともに、長寿県である上位10位を暖色で、短命県である下位10位を寒色で塗り分けた。上位1位はとくに濃いピンクで、下位1位は濃い青で示した。
まず、男性の順位推移を見て地域的な特徴を分析してから、その次に女性の場合はどう異なっているかを記述することとしよう。
男性のご長寿県・短命県
最初に男性の順位についてはどういう特徴があるだろうか。
直近の特徴に着目すると、青森を筆頭に東北・北関東で短寿命であり、長生きしたければ長野から西方面にある岐阜・滋賀・京都・奈良にかけての地域に住めばよいことになる。
しかし、地域によっては、時代にかかわらず寿命が長いか短いかのところと、時代ごとに順位が大きく変化しているところとがある。
下位グループになったり上位グループになったりと順位が大きく変化している地域は、大都市部(東京・神奈川、愛知、大阪・京都)と北陸、四国・南九州、そして沖縄である。
こうした変化が大きかった地域についての考察は後述するとして、まず、時代を問わず平均寿命が長い地域、短い地域はどこかを調べてみよう。
すると、東山(中部地方の内陸側、長野・岐阜)、東海(静岡・愛知)、および山陽(岡山・広島)はおおむね常に長寿地域であり、東北(青森・秋田・岩手・福島)、北関東(茨城・栃木)と北九州(福岡・佐賀・長崎)は、おおむね常に短命地域であることが分かる。
ただし、恒常的な長寿地域の中でも、東山の中の山梨、東海のうちの三重、山陽の中の山口は例外的にそう寿命が長くないか、むしろ短い。また恒常的な短命地域の中でも、東北の中の宮城、山形、北関東の中の群馬は例外的にそう寿命が短くない。
こうした例外地域に配慮すると、まとまった恒常的長寿地域といえる長野・岐阜の東山地方から東海地方を経て京都・奈良までの近畿地方東部にかけての地域に住めば、子供世代の将来まで含めて、まず、安心ということになる。さらに飛び地となるが岡山・広島、熊本・大分の地域も将来に向けかなり安心である。