平均寿命の都道府県ランキング価値は…

最後に、以上のようなランキングがどの程度、意味があるかを判断できるデータを紹介して今回の立論を閉じることとしよう。

大正末(1921~25年)から現在まで3時点の平均寿命分布の推移を図表4に示した(1921~25年=黒、1954~56年=青、2020年=赤色)。2020年については米国の州別データ(緑)も参考に掲げた。

これからは、以下の3点を読み取ることができる。

【図表】大きく縮まった地域別の寿命格差

まず、戦前から戦後にかけて各地域で男女ともに平均寿命が大きく延びている。大正末におおむね40歳代であり、地域によっては30歳代だった平均寿命がいまや男女ともにおおむね80歳代となったのである。

第2に、男女差がひらいた。大正末では女の平均寿命の方が男より短い地域が存在した(福井、岐阜、広島など)。現在ではどの地域でも女性の方が、平均寿命が長くなり、その差も大きくなった(図中の45度線から上へシフト)。

そして第3に、地域間の平均寿命の差が大きく縮小した。大正末の分布に比べると現在の分布はほとんど団子状であり、地域差はほとんどなくなったといってもよい。衛生状態や治安、医療体制、健康保険さらには健康対策の全国的な普及、平準化がこうした地域差の縮小の背景にあると考えられる。毎期のデータを追うと地域差の縮小は1970年ごろまでにほぼ終了したことが分かる。

参考までに掲げた米国の州別の平均寿命は治安や健康保険の加入率、所得水準の違いにより州により9歳前後の差がある。これと比較して日本の場合は、図表1に見たようにせいぜい2~3歳の差であり地域別寿命の均質化が著しい。また、米国で男女とも最も長寿命のハワイ州より青森の方が寿命が長いことからも分かる通り、全体として日本の方が長寿命である。

つまり、過去と比較しても、また米国などと比較しても、今では国内であればどこに住んでも十分長生きできるのであり、最後になって立論の前提を覆すのは恐縮だが、実は、平均寿命の差を考慮した移住は今ではそれほどの意味がなくなっている。長生きできるかどうかという点から移住先を選ぶ必要はほとんどないのでご安心ください。

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