統合NISAにおいても、損益通算・繰越控除は不可
複数の口座で取引をしていると、たとえば「口座Aでは30万円の利益、口座Bでは20万円の損失」という具合に、利益と損失の両方が出ることがあります。
特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、利益が出た際は金融機関側で自動的に税金分を源泉徴収します。よって、上記のような例の場合、税金を払い過ぎてしまうというケースが出てきます。
このとき、利益と損失を相殺し、年間の利益を基に税金を計算することを「損益通算」といいます。この例では、30万円から20万円を引いた10万円が利益となります。この10万円を基に税金を計算するので、税金の負担が軽くできるのです。確定申告することで、約4万円分の税金が戻ってきます。
しかし、現行NISAと同様、統合NISAの損失は損益通算の対象外です。上の例で、もし口座Bが統合NISA口座だったとしたら、損益通算はできませんので、30万円の利益を基に税金を計算することになります。
また、損益通算で損失を引ききれない場合、残った損失分を3年間にわたって繰り越し、翌年以降の利益から差し引くことができます。これを「繰越控除」といいます。繰越控除も税金の負担を軽くするための制度なのですが、そもそも損益通算できない統合NISAは、繰越控除の対象外です。
統合NISAにも課題あり
利点の多い統合NISAですが、いくつか課題もあります。
今回、制度が利用できる対象者に「未成年」が含まれませんでした。未成年が対象の「ジュニアNISA」は2023年末で終了するため、統合NISAを未成年が利用できるとよかったのですが、議論する時間が取れず時間切れになったのだと推察されます。次回以降の制度改正で期待しましょう。
また、現行NISAの非課税期間が無期限にならなかったのは残念です。非課税期間終了時点まで資産を保有していた場合、課税口座か統合NISAへ移管できるような対応を検討してもらいたいものです。つみたてNISAであれば、非課税期間終了までに対応できる時間はたっぷりあるので、ぜひ実現してほしいところです。
統合NISAのつみたて投資枠は年間120万円です。月10万円積み立てを行うと15年しかできません。せめて月10万円を20年間できるように増額(1800万円から2400万円へ)をしてほしいと思います。また、現行NISAを開設している人は、面倒な手続きなしで統合NISAが開設できることに期待します。
最後に、「統合NISAは恒久化になったので始めるのはいつでもいいな」と思う人も出てくることでしょう。しかし、人間には寿命があります。長くやればやるほど複利効果・非課税の恩恵を受けられます。長くやるには、早くやるしかありません。
とはいえ、家計に無理のない範囲で始める・続けることが大事です。ぜひ行動して人生を変えましょう。