俳優の仕事は苦手な国語と同じ白黒あいまいなグレーの世界

こういう記述式の問題って、自分の世界、自分の得意分野に持っていけるのでとても楽しかった。夢中で書いているうちに、試験時間が終了していました(笑)。

実験をして、どれが一番かを確かめていく工程って、結局、白黒はっきりさせていくことなんだと思います。そこは、小学生のころに算数に感じていた面白さにつながっているのかもしれません。

無事に大学には合格しましたが、高校在学中からモデルの仕事を始め、大学時代からは俳優の仕事もいただけるようになりました。

今、痛感しているのは、俳優のお仕事は本当に文系的だということ。苦手だった国語と同じ、白黒があいまいなグレーの世界で、正解がありません。脚本を読んでも、行間から役の人物の気持ちを読み取ることは今も苦手で、監督さんにとにかく質問をするようにしています。

理系の勉強が役立ったことですか? う〜ん、たまに研究者の役が来たときに、実験器具の使い方がわかるってことぐらいですかね(笑)。

算数が苦手なお子さんを持つ親御さんにアドバイスですか? 私も結局、苦手な国語を克服できないまま大人になっていますから、難しいです……。

でも、私が中学受験をするとき、父や母がずっとそばにいてくれたように、わからなくてもいいから、一緒に勉強してあげたらいいと思います。親がそばにいてくれるだけで、勉強が楽しくなるし、明日も頑張ろうと思える。そうしているうちに、少しずつできるようになるんじゃないでしょうか。

イラスト2点は山本さんの作品。(出所=『プレジデントFamily2023年冬号』)

小学生のころは、図工も得意で、特に絵を描くことが好きでした。持ち前の負けず嫌いから、「誰ともかぶらないものを描こう」と、家を描いた絵の窓に布のカーテンをつけたら、すごく褒められたことを覚えています。

算数の図形も得意でしたが、絵を描くことと、算数の力は別だと思います。創作というのは文系の世界なんですね。感情とか、思いとか、気持ちとか、そういったものを表現していくもの。私も常識とか公式とかにとらわれず、自由に描きたいと思っているのですが、気がつくとみっちり、きっちり、理系的に描いてしまっている自分がいます(笑)。

いつかは脱・理系をして、枠にとらわれず、のびのびとした作品を描いてみたい。それが今のところの目標です。

(構成=田中義厚 撮影=岡村智明 スタイリング=黒崎 彩 ヘアメイク=イワタユイナ)
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