たとえば、東京・表参道のように、スーパーブランドの集積に成功しているまちは、地主、商店街の長年の取り組みの結果として生まれています。つまり、政治、行政の力で無理やり実現しても、そうしたまちは維持できません。

実際に、福岡市の商業施設「博多リバレイン」は、スーパーブランドによって地域の格を上げようとして大失敗した有名事例になりました。官民が投資して第三セクター方式で開発した上でスーパーブランドを誘致する計画でしたが、リーシングに失敗してあっけなく方向転換することになりました。

池袋が直面する新たな競争

現在の池袋は交通の便もよくなり、新たな住民が集まってきています。

スーパーブランドよりも、ヨドバシカメラのような家電から医薬品まで幅広くそろえる大型店のほうが、コア店舗として市場適合するという判断は現実的であると思います。

現在、池袋の沿線住民がスーパーブランドを買いたいときには、東京メトロ丸ノ内線や副都心線で20分程度の表参道や銀座に行くでしょう。JR湘南新宿ラインや副都心線などの直通運転で、北関東から訪れる人も以前より簡単に都心部にアクセスできるようになりました。

つまり、池袋は利便性がよくなり、評価が高まった反面、新宿、渋谷、表参道、銀座など都心所有商業立地と直通で結ばれることになったのです。

そのような中で、池袋駅には東武百貨店(西口)と西武百貨店(東口)の2つの百貨店が存在しているのです。現状にかなり無理があることを理解する必要があります。

そもそも百貨店業態は斜陽産業です。バブル景気に沸いた91年の売上高9兆7130億円(日本百貨店協会統計)を頂点に、長期的な下降トレンドにあり、コロナ禍の売り上げ減少で経営難が続いています。東京にある百貨店も経営状況は極めて厳しいわけです。だからこそ、そごう・西武は売却されたのです。

個人的には、駅直結のマンションにならずに、ヨドバシカメラのような商業施設を入れる判断をしているだけでもよかったと思うところです。

自治体は条例や予算で応じるべきだ

豊島区が本気でスーパーブランドを維持したいのであれば、法的な位置づけのない「区長による嘆願書」ではなく、条例、予算と向き合うべきでしょう。

かつては大型店舗に関する規制法「大店法」が存在していましたが、日米構造協議でゆがんだ運用を指摘され、2000年に廃止されました。現状は交通、環境影響に関する大規模小売店舗立地法(大店立地法)しか規制法はありません。自治体ができるとすれば、開発行為への許可、建築指導くらいのもので、個別のリーシングにまで口出しする権限なんてものはありません。

もし大型店の出店誘導を行いたいのであれば、大店立地法とは別に、独自条例によってリーシング内容に関する事前申請と自治体との協議プロセスを法的に位置づけるなどが必要でしょう。