「嘆願書」や「記者会見」で民間企業に圧力
池袋駅東口にあるデパート・西武池袋本店の改装計画をめぐり、豊島区の高野之夫区長が嘆願書を提出したことが話題になっています。
同店は、セブン&アイ・ホールディングスの傘下の「そごう・西武」が運営していますが、その「そごう・西武」は先月、アメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却されることになりました。
フォートレスは、ヨドバシホールディングスと連携し、百貨店と家電量販店の融合した店舗を展開する方針です。これに対し、豊島区長が記者会見で反対を表明。一部土地を所有する西武ホールディングスの後藤高志社長に、区長名の嘆願書を提出しました。
現状、低層階にはルイ・ヴィトンやグッチ、エルメスといった「スーパーブランド」が店を構えています。高野区長らは、それらがヨドバシカメラに変わることで、「今まで築き上げた“文化の街”の土壌が喪失してしまうのではないか」と主張しています。
そもそも、西武池袋本店の改装計画は違法ではありません。にもかかわらず、明確な法的権限もない区長が、公表前の民間投資の検討内容に対し、「嘆願書」や「記者会見」で民間企業に圧力をかけるのは極めて特異な事態です。
高級ブランド店があれば「一流のまち」なのか
池袋は私の地元に近く、中学時代によく訪れました。今でも帰省する際に立ち寄るまちの一つで、この25年ほどの変化を見てきました。
特に東京メトロ副都心線の開通(2008年)を契機に、状況は大きく変わってきました。区長や地元商店会が妄想する「池袋のイメージ」はすでに昔のものになり、池袋の現状・実態とは乖離しています。
だからこそ投資ファンドのフォートレスは、「そごう・西武」を買収することで、リーシング(商業用不動産の賃貸を支援する業務のこと)を変えようと考えているのでしょう。
今回の豊島区のように、地方自治体の中には、時折「まちにスーパーブランドがほしい」と唱える人が出てきます。「スーパーブランドのあるまちが一流」という思い込みによるものですが、無理な計画を立てて大失敗になりがちです。