米バイデン政権の変化を討論する

3人は、アメリカのウクライナ戦争に対する政策に表れた変化の兆しをめぐって討論している。概略はこうだ。司会役のスースロフ氏が、米バイデン政権の変化について述べる。

〈ドンバス(ウクライナのルハンスク州とドネツク州)の戦闘の進捗しんちょくによって米国の政策が変化しているようだ。もちろん米国からウクライナへのロケットシステムを含む武器の供与は続く。400億ドルの包括的支援を変更することもない。しかし、先週来、バイデン政権からウクライナの「勝利」とロシアの戦略的敗北という話が出なくなった。

対して戦闘の「終了」に関する声がよく出てくるようになった。少なくとも交渉による紛争の凍結について言及がなされるようになった。バイデン大統領自身が、紛争はロシアの敗北によってではなく、交渉によって解決されなくてはならないと、最近、「ニューヨーク・タイムズ」で述べた〉(翻訳は筆者、以下同)

「ワシントン政権は変化しているのか」サイムズ氏の見解

ワシントンの政策は本当に変化しているのかとスースロフ氏はサイムズ氏に見解を求める。

サイムズ氏は、変化が起きていることは事実だが、それが本質的な変化なのかどうかは今後の推移を見守る必要があるとして、二つの注視すべき点を挙げる。

〈第1の要因は、戦局が変化してきたことだ。残念ながら、現時点では、西側連合の交渉スタンスとの関連では、この要因が決定的に重要だ。

第2の要因は、米国の世論調査の結果だ。メディアでは有識者たちが、ロシアとの紛争に関して、より抑制的な対応ができるのではないかと議論している。これはバイデン大統領と民主党に好感を持つ人々だ。この人たちは、ドナルド・トランプ前大統領をとても恐れている。この人たちは世論調査の結果を見ている。米国の有権者の中でウクライナ戦争というテーマが優先度を持っていると考える人は3%だ。当初、バイデン氏は自らを勝者のように見せていた。

しかし、米国人の主要な利害関心はインフレだ。インフレによって米社会が破壊されている。商品が不足している。米国の国境を防衛する資金がない。米国の有権者にとって、またバイデン大統領や民主党を支持する人たちにとっても、ウクライナに提供する400億ドルは、関与しすぎだと見なされている。それによって米国内の利益が毀損きそんされている〉(同前)

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