「温泉」は3つの条件で定義されている

日本は世界でも有数の温泉大国である。北海道から沖縄まで多くの温泉が存在している。具体的には、温泉地が3000カ所以上で、温泉の源泉数は2万7000以上存在しており、さらなる温泉開発でその数は増加し続けている。では、温泉と言うとどんなイメージをもつだろうか。

温かくて効能成分たっぷり! そんな答えが多いかもしれない。

日本には温泉法という法律があり、温泉の定義がされている。それによると、次の3つの条件のうち1つでも満たしていれば、温泉となる。

①湧出時の温度が25℃以上である。
②1kg中にガスを除く物質が合計1g以上溶けている。
③指定された特定の成分(18種類)が一つでも規定量以上含まれている。

ここで重要なのは、これらの条件のうち一つでも満たしていれば温泉であるという点だ。つまり、温度が25℃以上あれば、ほとんど何も溶けていない水でも温泉である。物質が規定より多く溶けていると、どんなに冷たくとも温泉である。先ほどのイメージとは全く異なるものも温泉になり得るのだ。

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冷めた水を加熱しても“温泉”になる

このような条件を自然のままで満たしている温泉が天然温泉だ。

入浴に適した温度にするために、加熱したり、逆に加水したりしても、湧出時に温泉条件を満たしていれば、もちろん天然温泉となる。最近では、伝統的な温泉地に加えて新たに天然温泉をうたう施設が増えてきた。実はこれも温泉の定義が関係する。

近年、ボーリング技術が進歩し、地下深くまで掘り進めることができるようになった。一般的に、地熱の影響で100m掘ると地表温度より3℃地温が上昇する。つまり、1000m掘るとおよそ地表温度+30℃の地温となる。その地温と同じ温度の地下水をうまく汲み上げることができれば、それは温泉条件を満たした天然温泉となるのだ。

温泉に行った時に、温泉の成分表や効能(適応症)が書かれたものを見たことがあるだろうか。一般的に、温泉の効能は入浴による物理的作用や含有成分などによる化学的作用及びリラックス効果などの心理的作用によるものとされている。また、特定の泉質によっては、その成分による効能があるとされている。

しかし、これらは成分のせいというよりも、お湯で温まることでの神経系やホルモン分泌への刺激、免疫活性化や代謝の促進が主なようだ。「がんが治る温泉」と言われる温泉があるが、それは個人的な体験談として治った人がいるということで、科学的に裏付けられた効能とは言えないのである。