科学的に効能が説明できる「炭酸泉」

そんななかで、比較的効能が科学的に説明できるものもある。それは二酸化炭素が溶けている炭酸泉だ。

お湯に溶けている二酸化炭素は、皮ふから体内に入り込み、血液中の二酸化炭素濃度を増加させる。すると体は二酸化炭素を体外に運ぶために酸素を細胞に送り込もうとする。そこで酸素を送り込む血液をたくさん循環させるために血管を広げる。結果、血行が良くなり、血液循環が活発になるのだ。

左巻健男編『科学オモテウラ大事典』(東洋館出版社)
左巻健男編『科学オモテウラ大事典』(東洋館出版社)

炭酸泉に入ると、お湯に浸かっている部分が特に赤くなるのはこのためだ。血液循環が良くなると、全身の新陳代謝が促進されるので、入浴後のポカポカが長く継続したり、疲労が取れやすくなったりする。二酸化炭素の入浴効果は、濃度が高いほど大きいことが知られている。

お湯1Lに二酸化炭素が1000mg以上溶けたものを「高濃度炭酸泉」と呼び、循環器病の治療にも利用されている。ヨーロッパでは、炭酸泉のことを「心臓の湯」と呼んでいる。日本では、沸かさずにそのまま入れる天然の炭酸泉は数少ないが、近年、人工的に二酸化炭素を溶かした人工炭酸温泉が増えてきている。

二酸化炭素は温度が高くなると溶けにくくなるので、炭酸泉の温度は少しぬるめだが、じっくりと入浴してその効果を実感してみてはどうだろうか。

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