日本人にアンガーマネジメントは不要

皆さんが、どんな感情をコントロールしたいかと聞かれて、おそらく最初に思いつくのは「怒り」だと思います。

現在、感情コントロールをテーマにした書籍のなかで売れ筋となっているのは、「アンガーマネジメント」系の本です。怒りを鎮めるノウハウに対して、高いニーズがあるのです。

たしかに、アンガーマネジメントは大事なスキルであり、心得ておくに越したことはないでしょう。

しかし、日本人が本当に気にすべきポイントはそこではない、と私は思っています。

アンガーマネジメントの発祥地はアメリカです。こうしたトレーニングが生まれるだけあって、彼らが怒りに駆られたときの激しさは、日本人の比ではありません。

日本人は彼らよりずっと穏やかですから、怒りを抑えることにそこまで懸命にならなくていいのです。というより、むしろ「怒るべきときに怒れない」のが今の日本人です。

現在の政治に対する、日本人の「怒らなさ」は驚異的です。

和田秀樹『50歳からの「脳のトリセツ」 定年後が楽しくなる!老いない習慣』(PHPビジネス新書)

30年にわたって国力が落ち続けても、格差が広がり続けても、旧世代が利権に群がっていても、公文書が改竄されても、非難の声が大きな潮流となることはありません。

政治家の疑惑も、いつしかうやむやにされます。「とことん追及しよう」などと言う人は、「いつまで怒ってるの?」という目で見られます。

ほかの国ならばとっくに政権がひっくり返っているような事態を、日本人は何年も、許し続けているのです。

そんな人々がアンガーマネジメントの本を買って、「6秒数える」「深呼吸する」などの怒りの抑え方を学ぼうとするのはいささか妙です。日本人は全体的に、自分たちの感情の持ち方について、自己認識を誤っているのではないでしょうか。

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