普段深く話したことがない人と語り合う

ここからは僕の私見でもあるのですが、自分のやりたいことがうまく形式知化できない理由は、主に2つあります。1つは「ピッタリくる言葉(=形式知)を知らない」、2つ目は「ピッタリくる言葉がこの世に存在しない」ということです。以下で、それぞれ対策を説明しましょう。

1つ目の「ピッタリくる言葉を知らない」場合は、自分のやりたいことを言語化してくれる言葉がこの世にあるのに、まだ自分の知識不足で知らない状態です。なので、このときに大事なのは、「なるべく会ったことがない人、普段深く話したことがない人と語り合う」ことです。まさに、前に解説した「知の探索」です。

僕は、この好例を知っています。社会的活動を支援するクラウドファンディングサービス会社READYFORの代表取締役で、いま注目されている米良はるかさんという起業家をご存じでしょうか。実は彼女も、学生の頃は自分のやりたいことが見つからず、悶々としていたのだそうです。ところが、たまたま潜り込んだ東京大学の研究会で指導教授の先生に思いをぶちまけたところ、「君がなりたいのは起業家なんだよ」と言われたそうです。

そこで「起業家」という言葉に初めて出合った米良さんは、雷に打たれたように、「そうだ、私がやりたいのは起業なんだ!」とビタっときたそうです。まさに米良さんが先生と語り合った結果、その言葉で彼女の暗黙知が形式知化されたんですね。

写真=iStock.com/SeventyFour
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言葉がなければつくってしまえばいい

では、2つ目の「ピッタリくる言葉がこの世に存在しない」場合は、どうでしょう。この場合は、そもそも言葉がまだこの世にないのだから、新しい言葉をつくってしまえばいいんです。

新しい言葉をつくるのに重要なのは、「既存の言葉と、別の既存の言葉を新しく組み合わせる」ことです。例えば、「医療事務」と「ライター」を掛け合わせて、「医事ライター」という、ある意味で新しい職業ジャンルをつくってしまうわけです。

一見言葉遊びのようですが、これがすごく大事なんです。僕自身、経営学者でありながら、他にもいろいろなことをやっているので、言葉を組み合わせて「子育て経営学者」とか「キングダム経営学者」など新しい肩書きの言葉をつくることで、仕事を増やしたりしていますよ。