仕事がなくても男性は家事をするわけではない
【平山】もう一つの問題は、そもそも家事育児ができない理由として、仕事を持ち出せること自体、特権的なことだからです。
先ほどの「社会生活基本調査」を再び取り上げると、子どものいる世帯での育児時間は、男女ともに有業な場合や、男性だけが有業で女性は専業主婦である場合だけでなく、男性が無業で女性だけが有業の場合でさえも、女性のほうが長い。
つまり、女性は仕事と育児の時間をトレードオフすることも、仕事があるからといって育児を配偶者に任せることも、ほとんどできないということです。つまり、家事育児ができない理由として仕事を持ち出せるのは、男性の特権なのです。
優位を利用して反論を封じるのはハラスメント
【平山】女性が家事育児をすることがデフォルトになっている社会で、女性たちは就業継続の困難も含め、既にさまざまな不利益を被っています。そういうなかで、女性が男性に「家のことも、もうちょっとやってほしい」と訴え、自分の置かれた状況を改善しようとしているとき、男性が「仕事で忙しいんだから」と言って反論することは、優位にある側がその特権を最大限利用して、劣位の側の必死の訴えを叩き潰す行為にほかならないんです。これこそ、構造的優位の乱用そのものでしょう。
【澁谷】めちゃくちゃ腹がたってきました。
【平山】これはハラスメントと言ってよいと思っています。相手に反論を難しくさせる、自分の構造的な優位を利用して、相手を自分の好きなようにするのがハラスメントですから。「時間がなくてできない」がまったくの虚構ではないにしろ、それを当然のように持ち出し、そのことで男性の家事育児の少なさを「致し方ないこと」のように説明してしまう意味を、男性はもっと自覚したほうがいいと思いますよ。それって、ただの弱い者いじめですから。