毎日インターネットを使う子の大脳灰白質の体積は増えない
きわめて重要な問題ですから、やや詳しくお話しします。私たちは、仙台市の5~18歳の児童生徒224名を対象に3年間、脳の発達の様子をMRIで観察しました。
最初のMRI検査のとき、その時点のインターネット習慣をアンケート調査しました。「親が使わせない」「まったくしない」「ごくたまに」「週に1日」「週に2~3日」「週に4~5日」「ほとんど毎日」という7つのグループのどれに入るかを調べました。このとき、大脳灰白質の体積はグループ間で差がありませんでした。
ところが、3年後のMRI検査では、インターネット習慣に応じて大脳灰白質の体積の増え方が異なり、発達の差がはっきりと認められたのです。
インターネット習慣がない、または少ない子どもたちは、3年間で大脳灰白質の体積が増加していました。ほぼ毎日インターネットを使う子どもたちは、増加の平均値がゼロに近く、恐ろしいことに、ほとんど発達が止まっていたのです。
スマホを使いすぎる子は、3年で大脳全体の発達が止まった
これは、インターネット習慣と脳発達の関係を調べたので、スマホ習慣と脳発達の関係を調べたわけではありません。ただし、中学生の65%以上、小学生の40%以上がスマホでネットを利用しているという内閣府のデータなどがあります。
スマホと脳の発達も同じような関係があるだろう、と推測できます。
そして、大脳白質でも3年間、ところどころでその密度が増えておらず、毎日インターネットを使う子どもたちでは、発達がほとんど止まっていました。
結論はこうです。おそらくはスマホを使ってインターネットを使いすぎたことによって、脳の発達そのものに障害が出た、と思われます。
スマホを高頻度で使えば、3年間で大脳全体の発達がほぼ止まってしまう。ならば、勉強しようがしまいが、また睡眠を充分とろうがとるまいが、学力が上がらなかったのは当然、というわけです。
極論すれば、3年間スマホをまったく使わなかったか、または使っても1日1時間未満の使用にとどめた中学3年生は、脳が小学6年生から順調に発達したので、中学3年生相当の脳を持っています。
ところが、3年間スマホを毎日頻繁に使っていた中学生は、脳が小学6年生から発達しなかったので、小学6年生相当の脳を持っています。この二人が同じテストを受ければ、脳の発達が3年分も違うのだから、結果が大きく違わないほうがおかしいのです。
この恐ろしい事実のことを、くれぐれも真剣に考える必要があります。