「私が介護できなくなったら長男は一体どうなる……」
母親からの聞き取りだけでも、長男は日常生活にかなり支障が出ていることが分かりました。そこで筆者は母親に言いました。
「今お話いただいたようなことを病歴・就労状況等申立書にまとめていきます。ただし、病歴・就労状況等申立書には発病(脳梗塞の発症)から現在までをまとめる必要があるので、当時からできるだけ詳しく記載する必要があります」
それを聞いた母親の表情は不安でいっぱいになりました。
「作文を書くようなものですよね。果たしてきちんと書けるかどうか……」
「もしご長男の同意が得られれば、私がお手伝いをすることもできます。ご安心ください」
「それはすごく助かります。私たちだけで書類をそろえるのは不安がありますし。お手伝いいただけることを長男にも伝えてみます」
その後、長男から同意が得られたので、筆者はご家族と協力し、障害基礎年金の請求を完了させました。請求から3カ月が過ぎた頃。母親から筆者へ連絡がありました。
「おかげさまで障害基礎年金が受給できることになりました。年金の級は1級でした(月8万7200円、年104万円余り)。もう二度と障害年金は請求できないとあきらめていたので、本当に助かりました」
「それは一安心ですね。お役に立てることができて、こちらもうれしく思います」
「ただ……」と続けた母親は、その胸の内にある不安を口にしました。
「今のところ長男は77歳の私(母親)の介護を受けています。ですが、いつまでも私が介護をし続けることはできません。2歳上の夫もいつまで元気でいられるかわかりません。そうなったら長男は一体どうなってしまうのか……」
「そうですね。お母様からの介護が受けられなくなった場合、ご長男はご自宅で生活し続けることは難しいかもしれません。そうなると、ご長男は介護施設に入居することも検討しなければならないでしょう。施設の相談は、住所地の地域包括支援センターでもできます。お母様が高齢になって相談に行くことが難しいようなら、ご長女(長男の姉)に代わりに相談に行ってもらえないか、今のうちからお願いをしておくとよいかもしれません」
「わかりました。長女にもそのように伝えてみます。この度は本当にどうもありがとうございました」
母親は少しだけ安心した様子でそう答えました。