それが必ずしもほんとうの意欲を表していないのは、各種の調査結果からも見て取れる。象徴的なのが「ワークエンゲージメント」の極端な低さだ。
ギャラップ社が2017年に行った調査によると、日本では「熱意がある」(engaged)社員がわずか6%に過ぎず、139カ国のなかで132位となっている。同様の調査は他の機関でも行われているが、いずれの結果を見ても日本人のワークエンゲージメントは主要国のなかで最低水準にある。
ただ問題の深刻さは、エンゲージメントの低さそのものより、それが表面化しないところにあるのではなかろうか。
「やる気」重視の風土が個人の「やる気」のなさを隠している
いうまでもないことだが、「やる気」のない人はどこの国にもいる。中国の若者の間ではいま、激しい競争社会に背を向け、努力しようとしない「躺平主義」と呼ばれる生き方が広がってきているという。そして、それが態度や働きぶりにも表れている。
実際に中国の企業を訪ねてみると、床に横たわるなど「やる気」のなさを隠そうともしない若者の姿を目にすることがある。少なくとも日本人と違って、周囲の目をそれほど意識している様子は感じられない。
IBMが2019年に行った調査や、人事コンサルタント会社のケネクサが2012、13年に実施した調査によると、中国人のワークエンゲージメントは日本人よりかなり高い水準である。にもかかわらず日本人のほうが中国人よりも「やる気」があるように見えるのは、やはり日本では成果よりも態度や意欲を評価する傾向が強いからだろう。
いずれにしても、「やる気」を重視する組織や社会の風土が、逆に意外なほど「やる気」が乏しい現実を見抜けなくしているのは皮肉である。