かつてのボールは動物の臓器で作られていた

この長い道のりにおいて、大きな影響を与えることになったふたつの要素がある。ひとつはボールだ。中世から19世紀の前半にかけて使用されていたボールは動物の臓器で作られた。

当時のボールは雄牛またはブタの膀胱に空気を入れてふくらませてから、皮で覆っていた。ブタの膀胱をシカの皮で包んで作った450年前のボールが、スコットランドのスターリング・スミス博物館に展示されている。アイルランドの言い伝え(実話というよりも伝説に近いと思われる)によると、この島では1800年頃までボールの材料として使用されていたのは……なんと処刑された犯罪者の胃だったというのだ!

使用された素材の件は別にしても、これらのボールには足だけを使って動かすのに適した球体としての質を備えていないという問題があった。いびつな形のため、選手たちはより正確にボールを前に進めるために手で抱えて運ばざるをえなかった。言ってみれば、ラグビーボールを使ってサッカーをしているようなものだったのだ。

大きな進展がもたらされたのは、アメリカ人の発明家チャールズ・グッドイヤーが1855年のパリ万博でゴム製のボールを紹介した時だった。空気でふくらませることができる完全な球体のゴムボールの発明でグッドイヤーは金賞を受賞したが、ロンドンでスポーツ用品の工場を経営していたリリーホワイト一族もこのボールに注目し、1866年にはアメリカ人の発明を取り入れて、こんにちの公式戦で使用されているものと同じ大きさと重さを持つ最初のボール「ナンバー5」を製造した。

このボールが持つほぼ完全な球体という特徴のおかげで、どんな土地でも足だけでプレイできるスポーツがようやく確立することになった。

初めての「ゴール」は1681年?

もうひとつの要素はゴールだ。歴史家の間には、ゴールにボールを入れるという目的で行われた最初の試合は、ロンドンにあるアルベマール侯爵の邸宅で行われたとの説がある。

ルチアーノ・ウェルニッケ『サッカーはなぜ11人対11人で戦うのか?』(扶桑社)

クラレンドンハウスとして知られるその場所で、1681年に家主の執事たちのチームが国王チャールズ2世の執事たちのチームと対戦した。邸宅内の中庭で顔を合わせた両チームの選手たちは、その場所が「マスフットボール」をするには少し狭く、壁をゴールとして使用すると危険だと判断して、敷地を取り囲む壁のゲートと、建物内に通じる入口の扉をゴールにすることで合意した。

この慣習が18世紀および19世紀の学校で盛んになり、子供たちは教室や回廊の扉をゴールとして使用した。

技術と創意工夫を組み合わせ、道具と舞台が揃ったことで、サッカーが今あるようなサッカーになる環境が整ったのだ。

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