「数字を正しく読み取れればよい」と考えることが最初の一歩

「だますほうが悪い」は正論ですが、それではいつまで経っても数字を見たときに「だまされるかもしれない」と思い続ける人生から抜け出せません。それは少しばかりもったいないように思います。

数字にだまされるとは、相手の問題ではなくあなたの問題。どんな場面でもだまされないような数字の読み方をあなたが身につければ、この厄介な問題は解決するのです。お待たせしました。次項から私たちが数字にだまされる事例をたくさんご紹介していくことにします。

・POINT
「相手がだまそうとするのが悪い」ではなく、「自分が数字を正しく読み取れればよい」と考えることが最初の一歩

「顧客満足度が90%!」というのはなにを表しているのか

「当社の製品は、顧客満足度がなんと90%!」

テレビCMや街中の広告でこんなフレーズをよく目にします。たくさんの人に支持されている商品だなと感じる方も多いでしょう。しかし、これは本当にそう評価すべき内容なのでしょうか。私であれば「これだけでは良いとも悪いとも評価できない」と意味づけします。なぜなら、もとの数をどう定義したかが明らかではないからです。

基本的な話から始めましょう。この「90%」とは割合と呼ばれる数字です。たとえば100人のうち男性が90人ならば「男性の割合が90%」と表現するものであり、この100人を「もとの数」と表現します。

ここで問題になるのは、もとの数が10人で、うち9人が男性でも同じように「男性の割合が90%」と表現できることです。顧客満足度の話に戻しましょう。あの「当社の製品は、顧客満足度がなんと90%!」というフレーズだけでは、もとの数がいくつなのかがわかりません。10人のうち9人? 100人のうち90人? 1億人のうち9000万人? 10人のうち9人なのか、1億人のうち9000万人なのか、それによって90%という数字の意味が変わってきます。

前者であれば「たまたまじゃないの?」という指摘もできますが、後者はそうはいかないでしょう。1億人とは日本の人口に近い人数ですから、「確かに多くの人が満足している製品」と意味づけてもいいのではないでしょうか。

また、違った視点からこの90%という数字にツッコミを入れることも可能です。たとえば次の2つの場合を考えてみましょう。

A 超優良顧客(たとえば年間利用額の上位10人)にアンケートをとった結果
B 一度でも利用経験のある顧客からランダムに10人選び、アンケートをとった結果

Aの場合、「顧客満足度90%」はある意味で当たり前の結果といえます。むしろ100%でないことのほうが問題かもしれません。ここでの「顧客満足度90%」という結果はポジティブなものというよりはネガティブな意味づけをすべきものになるでしょう。満足と答えなかった1名の理由を把握することはとても大切な仕事になります。

数字は同じでも、意味はまったく違う(出所=『数字にだまされない本』)

一方、Bの場合はアンケートの対象者に偏りがありません。そういう意味でこちらのほうが顧客満足度の信憑性が高くなり、評価もポジティブなものになるでしょう。このように、「90%」という数字それ自体はひとつのことを表現していますが、その意味は無限に存在します。