野球のストライクは正しく判定されているのだろうか。江戸川大学客員教授の鳥越規央さんは「データを詳しく解析すると、球審の認識するストライクゾーンはカウントによって変わることがわかった。『2ストライク』ではゾーンは狭く、『0ストライク』ではゾーンが広くなる傾向がある」という――。

※本稿は、鳥越規央『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/pkripper503
瞬時にストライクかボールか判定するのは至難の技(※写真はイメージです)

ストライクの判定は至難の技

近年、テクノロジーの発達により、グラウンド上の選手やボールの動きを計測する技術が格段に向上した。

そして、それらの膨大なデータの解析によって、セイバーメトリクスは著しい進化をとげている。

ここで、改めてストライクゾーンの定義を述べてみよう。

ストライクゾーンとは、ホームベースの五角形を底面とし、打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間と定義されている。

ボールはこのゾーンを一部分でもかすめればストライクと判定される。

しかし、ボールがそのゾーンを通過するのにかかる時間は0.1秒あるかないかだ。

それを瞬時にストライクかボールか判定するのは、球審にとって至難の技であろう。

しかし、「PITCH f/x」や「Statcast」といった測定機器による計測で、投球がストライクゾーンを通過しているかどうかを即時に判定できるようになった。

そのため、実際にはゾーンを通過していないのにストライクとコールされたり、逆にゾーンをかすめているのにボールとコールされたりしているボールも、判別できるようになった。