「洗脳広告」の成功体験に他企業が追随した結果
筆者が中国ゲーム会社から音楽制作を依頼されるときも、洗脳的な、言い換えると、印象に残るフレーズを要求されることが多い。それはまさに、上記のような広告の成功体験があるからであろう。この「征途」の広告手法は、その後何年も使いまわされトレンドとなった。16年経った今でもこの話題が持ち上がるほどだ。現在でも映像広告の最も基本的な、クラシックな戦略として「洗脳」という言葉は認知されているのだ。
「征途」はその成功から、その後も多くのゲームにそのゲームシステムが利用され、またストーリー自体も多くのゲームへ派生し受け継がれていったが、それはまた別のお話となる。
「征途」の広告から見えてくるのは、中国のゲーム会社は明確なターゲット、そしてゾーニングされたユーザーを意識していることである。そして日本に流れ着く広告はどれも中国のリテラシーが低いユーザー向けのものなのだ。
小規模ゲーム会社は広告で釣ってダウンロードさせる
もっとも、これまで述べてきたような「俺最強系」に当てはまらないような中国ゲームの広告もある。
セールスランキング(セルラン)によく登場する「アズールレーン」「アークナイツ」「原神」「崩壊学園3rd」「幻塔」などは手法が異なる。
アズールレーンやアークナイツと先述した「マフィア・シティ」との大きな違いは、ゲーム内に登場するキャラクターなどのビジュアルが日本コンテンツを意識しているということだ。例えばアズールレーンの屋外広告では、キャラクターの大きなイラストとともにキャラ名とその声優名が記載されている。いわゆる「オタク系広告」とでも言えようか。