中国の四川省は、麻婆豆腐や坦々麺などの激辛料理が有名だ。四川省出身で、中国の文化をYouTubeで発信しているヤンチャンさんは「地元料理の辛さに比べたら、日本の激辛料理は小辛のレベル。そもそも辛さの質が違う」という――。

※本稿は、ヤンチャン『33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

麻婆豆腐
写真=iStock.com/zepp1969
※写真はイメージです

「四川省=4つの川」ではない

四川省は中国西南部に位置していて、人口やGDPは比較的上位です。わたしの出身地なので、小さい頃から「4つの川ってどの川のことだろう?」と疑問に思っていたのですが、四川省という名前は、川とは関係ないです。四川省出身の人でもほとんど知らないことですが、宋の時代に4つの行政区に分けられていたことが名前の由来になっています。

いまは「川西せんせい高原」と「四川盆地」の2地域に分けられる場合が多く、川西高原の西側はチベット高原に属します。

四川省は『三国志演義』でいえば蜀で、略称も「蜀」か「川」。省都は、蜀の都でもあった成都です。

『三国志演義』のイメージも関係して、山の多い田舎と思われがちですが、人が住んでいるところは、ほぼ盆地で、山はなく、都会化が進んでいます。

2000年以上前の灌漑施設が今も現役

古くから四川盆地は“天府の国”と呼ばれていました。外敵からの攻撃を防ぎやすく、作物を育てやすい肥えた土地だからです。『三国志演義』においても「守るに易く攻めるに難しい国」と言われていました。

四川盆地を天府の国に変えたのは、およそ2200年前に作られた都江堰とこうえんという水利・灌漑施設です。日本の人にはピンとこなくても、中国では超有名! この都江堰は、改良や補修を加えながら今現在も機能しているのです。もともと水害が多い地域だったのですが、都江堰がつくられたからこそ、劉備はここに国を築こうという気になったのだと思います。都江堰がなければ現在のように四川省が豊かな地域にはなれなかったはずです。

“世界水利文化の開祖”とも呼ばれ、世界遺産にも登録されています。都江堰を囲むように広大な自然公園がつくられていて、人気の観光名所になっています。