中国のIT企業が集結する深圳しんせん市は、長期居留民の平均年齢が32.5歳という若者が多く住む街だ。市民はいったいどんな生活をしているのか。中国の文化をYouTubeで発信しているヤンチャンさんが解説する――。

※本稿は、ヤンチャン『33地域の暮らしと文化が丸わかり! 中国大陸大全』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

中国の深セン
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深圳、香港、マカオを束ねる巨大経済地域

広東省は中国南部にあり、特別行政区の香港とマカオは広東省の南にあります。

広東省を流れる珠江の河口にある三角地帯は「珠江しゅこうデルタ(珠江三角洲)」と呼ばれ、広州、深圳、東莞とうかん珠海しゅかい、香港、マカオなどの都市がここに含まれます。

珠江デルタには多くの外資系企業も進出しており、一大都市圏を形成しています。

広東省でもっとも注目を集めているのは深圳です。広東省に限定することなく、中国でもっとも注目を集めている都市だと言っても過言ではありません。深圳は香港と接している経済特区で、北京や上海と並ぶ世界都市になっています。経済特区とは、外国資本の導入など特別な経済政策をとることが認められた地域です。わたしも深圳に行ったときにはとにかく衝撃を受けました。

北京や上海と並ぶというより、すでに北京や上海を超えている印象だったのです。

オシャレする暇もないほどとにかく忙しい

深圳では街にいるのは若者ばかりなのに、男の子はダサく、女の子は化粧もろくにしていないことにも驚きました。ダサいというと言葉は悪いのですが、見た目をまったく気にしていないようです。

どうしてかといえば、彼らはみんな“とにかく仕事”だからです。

深圳には「996」と呼ばれる奮闘文化があります。朝9時から夜9時まで週6で働くことからそう言われます。でも実際は996どころではありません。夜の11時や12時まで働くのも当たり前のようになっています。

夜の11時を過ぎても、スーパーやレストランなど多くの店は普通に営業しています。レストランの壁などには「深圳人、加油ジャーヨー!(頑張れ、深圳人)」といったポスターが張られています。そして、地下鉄やバスには育毛剤の広告がやたらに目立ちます。深圳で働いている人たちの大変さがしのばれます。

「中国一、家が高い」のも納得

深圳は「中国一、家が高い」とも言われます。それでも深圳の人たちは、深圳に家を買い、そこで子どもを育てたいから、必死で働いているのです。

中国では学校の周辺に家がないと、子どもをその学校に行かせるのが難しくなるので、学校の周辺は、家や土地が高くなる傾向があります。深圳の学校周辺となれば、なおさらです。それにもかかわらず、そこに家を買おうとしているわけです。そういう目標があるからこそ遊んでいられないのですね。

深圳で頑張っている人たちのことを中国人は敬意をもって見ています。彼らが頑張ってくれているので中国のIT産業は世界レベルで発達していて、国民の暮らしが豊かになっているからです。