超硬合金とは「腐らない硬いキャラメル」
製造というのは、どのような事業展開をしていくか決めたら、それをきちっと最後までバックアップするというところまでがひとつのセットです。ですから、会社が決定を下してから、試作をつくり始めるスタートまでが、物理的に近い場所でやるということは、その分フットワークが軽く、単純に決定から実行までの時間短縮になります。近年のように景気や経営方針などの変化の振り幅が大きい時代には、これは有利な体制だと思います。タンガロイは、理想のメーカーに近づいているのです。
私たちが04年に東芝グループから独立することになった際、株主構成が大幅に変わり、東証一部の上場基準を満たさなくなったため、上場廃止となりました。当時は再上場するつもりでしたので、アナリストや銀行の評価が気になりました。そこで余分な在庫をなるべく持たず、必要なときに、必要なものだけをつくる、トヨタ式生産方式「ジャストインタイム」を徹底するため、専門のコンサルタントにもお願いして、工場で2年ほどトレーニングをしていたこともあります。
その後、08年にIMCグループの傘下に入ることになり、再上場をする必要もなくなりましたので、劇的に経営方式を見直すことができました。
自動車という製品は数万点の部品をもとに成り立っています。もちろん家電製品もそうですし、世にある商品はだいたいそういうものが多いと思います。しかし、私たちタンガロイの製品は部品点数が非常に少ないのです。タンガロイのメーンの商品は超硬合金という黒い塊です。
外見は、硬いキャラメルみたいなものです。キャラメルと違うところは、腐ったりはしません。商品が市場で陳腐化しない限り、お客様が加工前の素材として持っていても、あるいは最終製品として持っていても、現金に次ぐ価値を持つということになります。
たとえば、銀行からお金を借りている会社、株式上場している会社ですと、アナリストに受けのいい経営や、銀行が評価してくれるような経営の仕方をしなくてはなりません。