母による極度の束縛

母親のうつ病と並行する重大なエピソードが、母親がサクラさんを極度に束縛したことだ。

【サクラさん】でも、私も母のこと嫌いじゃないし、何とか、元気になるようにいったらあれですけど、落ち着くようにそばにいてあげようって、そこで多分、思ってたんかなって思うんです。〔……〕お母さんと二人で私はどこにも頼らずに本当、二人きりの生活をしてきて、携帯は持たされていたんですけど、友だちと遊びに行こうものなら、200件以上電話がかかってくるんです。お母さんから。過保護なんですよ。いろんなパターンあると思うんですよ。

村上靖彦『「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう”子どもたちの孤立』(朝日選書)

ネグレクトって育児放棄じゃないですか。うちのお母さんは過保護やから、支配タイプやったんで。私が見えないと発狂するんですよ。家帰ったら、たまたまロフトに住んでいたんですけど、うち。上からテレビ以外のすべての物が本当、CDの海みたいな。本当に、CDとか立てていたんですけど、ぶわあってなっていて。

買ってもらった自分の財産みたいなのを、帰ったら、ぼろぼろ、ポスターびりびり、でも、泣くじゃないですか、私が「やめてよ、なんでそんなことするの」、自分の大事な物を壊されて、「なんでー」って言ったら、「あんたが私、大事にせえへんからや」って言って、お母さんは苦しくて泣いているのに、なんでサクラはそんなしっかりしてんねん」と。

「それが許せない、あんたは子どもじゃない」って言って。

写真=iStock.com/Ponomariova_Maria
※写真はイメージです

母のことは嫌いじゃないけど…母親の束縛への複雑な思い

サクラさんは「でも、私も母のこと嫌いじゃないし」と母親へのポジティブな思いを語ってから、しんどい思いを語り始めたのだった。自ら母親のもとに居ようという決意が想起されるのだが、そのまま母親によって束縛される様子が続いて語られる。このことはサクラさんの意思と母親の束縛の屈折したつながりを暗示する。

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